投資や融資を行う際には投資対象が安全なのか、評判はどうなのかといったことを気にしてから判断することが多いと思いますが、その中の代表的な指標として格付けがあります。
格付けを行う会社は格付け機関や格付け会社と呼ばれており、格付け会社にも色々な会社が存在しているのはご存知でしょうか。
今回は格付け機関、格付け会社の業務内容と信用性についてご紹介いたします。
目次
格付けとは
格付けは企業や政府、金融商品などを信用状態に基づき、債務を返済できるかどうかの評価を行うことになります。
信用力が高く、債権の元本や利息が確実に払えそうな国や企業は格付けが上がり、返済能力が低いと見なされると格付けが低いです。
格付けが必要な理由は投資家の判断材料となるためです。
国債や社債など貸したお金がちゃんと返ってくるのかどうかを記号や数字でレーティングしたもので、融資を行う投資家に対しての判断基準の一つとして重要視されています。
格付けはあくまでも債務の返済能力についてのため、総合的な評価や成長性を重視する傾向がある株価目標や分析とは異なることを事前に理解しておきましょう。
格付け機関、格付け会社の業務内容とは
格付機関(rating agency)とは上記のように発行体の評価を格付けする会社のことです。
格付け会社(rating firm)や信用格付機関(credit rating agency)と呼ばれたりもしています。
格付会社は発行体からの依頼を元にした「依頼格付け」の場合もあれば独自に行う「勝手格付け」の場合もあります。
発行体の方とのミーティングや財務分析、業界分析などを行い、金融商品または企業・政府などの信用力を各機関ごとにおける基準に基づいて「AAA」や「Aa2」などの記号や数字を用いて評価をします。
信用格付は公表され、投資家が債券などの金融商品への投資を行なう際の参考データとなるほか、株価などにも大きな影響力を与える場合も多いです。
最近では大学や株式、プロジェクト・ファイナンス、ストラクチャード・ファイナンス等による金融商品も、格付会社による信用格付の対象となっています。
格付会社はできるだけ公平・中立な評価を行なうため、複数のアナリストの意見を元に信用格付を行いますが、各格付け機関の主観的な評価となってしまうこともあり、複数の格付け機関が格付けを行っている企業や金融商品もあるため比較してみることもおすすめです。
日本で活動している格付け機関とは
金融庁に届出をして登録をされている格付会社は信用格付業者と呼ばれており、日本では以下の7社です。
金融庁登録番号 | 会社名 |
---|---|
金融庁長官(格付)第1号 | 株式会社日本格付研究所(JCR) |
金融庁長官(格付)第2号 | ムーディーズ・ジャパン株式会社 |
金融庁長官(格付)第3号 | ムーディーズSFジャパン株式会社 |
金融庁長官(格付)第5号 | S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社 |
金融庁長官(格付)第6号 | 株式会社格付投資情報センター(R&I) |
金融庁長官(格付)第7号 | フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社(Fitch) |
金融庁長官(格付)第8号 | S&PグローバルSFジャパン株式会社 |
参考:金融庁 信用格付期間
株式会社日本格付研究所(JCR)
日本格付研究所(JCR)は1985年に設立された国内で最も影響力のある大手格付け機関で、日系では唯一世界の開発銀行5行の格付けを行っています。
比較的高い格付けをする傾向があることでも有名です。
参考:日本格付研究所(JCR)
株式会社格付投資情報センター(R&I)
格付投資情報センター(R&I)は1975年に日本経済新聞社の社内で発足したのがきっかけとなっており、同社の連結子会社かつ特定子会社です。
信用格付事業を中心に、年金運用のコンサルティング事業や年金・ファンドに関する情報提供事業なども行っています。
参考:日本格付研究所(JCR)
Moody’s Corporation(ムーディーズ)
アメリカの2大格付け会社の1つで、ジョン・ムーディー氏によって1900年に設立され、1909年から格付けを行っています。
日本が発行体の債券についても、戦前から調査・評価を行ってきた歴史を持っており、グローバルでの影響も非常に大きい格付け会社です。
国内の信用格付業者では上記のようにムーディーズ・ジャパン株式会社とムーディーズSFジャパン株式会社の2社が登録されています。
S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)
S&PはMoody’sと合わせてアメリカの2大格付け会社の1つです。
もっとも厳しい格付けをする傾向があるといわれています。
株式指数である「S&P 500」を発表している機関ということでも有名です。
日本では1986年に東京オフィスを開設以来、スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパンと日本スタンダード&プアーズが共同して国内の企業や債券の格付けを行っています。
参考:S&P
Fitch Ratings Ltd.(フィッチ)
Fitch Ratingsはロンドンとニューヨークに本拠地のある格付け会社です。
上記2社に続く、世界3番手の機関になります。
仏フィマラックS.A.がほぼすべての株式を保有していたが、現在は米ハースト・コーポレーションの傘下にあります。
日本は1989年に東京事務所を開設しました。
信用格付の信用性とは
2007年に起こったサブプライム住宅ローン危機に端を発するリーマンショックを含む世界金融危機ではサブプライムローン証券化商品に対して付与された「信用格付の不透明な内容」が問題視されました。
サブプライム住宅ローンとは主にアメリカの信用度の低い借り手向け住宅ローンのことです。信用度の高い借り手のことはプライムローンと呼ばれています。
ローン会社は住宅や車などを担保にして、当初数年間は低めの固定金利を適用したり、利息だけの支払いでよい形をとるなどして借りやすくしていました。
サブプライムローンの様な信用力の低い貸付であっても証券化商品として複数の商品と組み合わせることでリスク分散したと見なされて、高い信用格付けが付与されていましたが、実態とはかけ離れていたこともあり世界各国において格付会社に対する法規制が導入される契機となりました。
また、格付け機関はあくまでも民間企業であり、格付け依頼を大量にしてくれる取引先の格付けにおいては多少緩くなる可能性も否定はできません。
例えばそのような優良顧客が他社の格付け機関の方が高めのレーティングをしてくれるので次からは頼まない、といった事になっては売上に大きく関わるためです。
S&P、ムーディーズ、フィッチの3社で格付け市場の9割以上が占められており影響が非常に大きいと言えるでしょう。
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