会社を設立すると銀行で法人口座の開設を行う必要がありますが、法人口座の開設には審査基準があり個人口座よりも厳しいのが実情です。
もちろん個人名義の口座でもダメというわけではなく法人との取引も可能ですが、信用度を下げる可能性に繋がってしまうことや、お金の区分けをしっかりとしておかないとお金の管理が難しくなるというデメリットもあります。
今回は銀行の法人口座が作れない理由と審査基準、メガバンクとネット銀行の違いについてご紹介いたします。
目次
銀行の法人口座が作れない理由とは
実は私もしばらくは個人名義の銀行口座で管理をしていましたが、メガバンクとネット銀行、ゆうちょ銀行で法人口座を開設しました。
自分自身の経験も踏まえて、予め銀行の法人口座が作れない理由と審査基準について知っておくことで、口座開設の確率を上げることも可能です。
ご存知の方も多いと思いますが、銀行の法人口座開設の審査は年々厳しくなっていると言われています。
背景には、振り込め詐欺や反社会的勢力、海外への不正送金など、法人口座が犯罪に利用されないための銀行の取り組み強化があると言われています。
口座が犯罪に使われたとなると銀行の信用問題にも関わりますので、信用性が低い企業の場合にはリスクをおかしてまで口座を作ってもらわなくても良いというのが本音とも言えるでしょう。
一般的には上記のような理由で説明されることが多いのですが、銀行側の視点から法人口座について考えてみるとよりわかりやすくなります。
銀行の法人ビジネスのマネタイズとしては大きく分けて
- 手数料などのトランザクション業務
- 融資業務
- 金融商品の販売 M&Aなどの投資銀行業務
があげられます。
将来成長が見込まれる企業は別としても、現時点で信用度が低い企業や規模の小さい企業に関しては、上記のビジネスの相手として見なされませんので、特に信用度が低い企業にはわざわざ法人口座を作ってもらいたくないとも言えるでしょう。
また、リーマンショック以降企業の倒産も相次いでしまったため、余計厳しくなっていることにも繋がっているようです。
新型コロナウイルスの影響を受けて今後も審査に関してはやや厳しくなることが想定されます。
銀行の法人口座の審査基準と断られやすい基準とは
法人口座を作成する際、銀行は企業のどういう点を見ているのでしょうか。
基本的には銀行として口座を開設する際に、企業や代表者の信頼性があるかどうかが重要となります。
法人口座の審査が通らずに断られやすい理由は以下が挙げられます。
最重要!事業内容がわかりにくい
最近は私の会社も含めて横文字系の会社名が多く、社名を聞いただけで何をやっているのかわからない会社も多いです。
そのため、「どのような事業内容の会社か」ということをある程度明確に説明できる必要があります。
会社の実態を示すためにも独自ドメインのホームページや、場合によってはパンフレットや会社紹介資料なども事前に用意しておいた方がよいでしょう。
法人口座の場合には確実にホームページを見てどのような事業をやっている会社なのかを調べられますので最重要ポイントになります。
特にコンサルティングのような実態がなかなか掴みにくい事業をしている場合には「誰に、何を、どのように」といったことがわかるようにしておいた方が良いと思います。
創業者の経歴がわかりにくい
事業内容と合わせて創業者の経歴がわかりにくいと、どのような人が会社を経営しているのだろうかと銀行は不安要素として見る可能性があります。
特に銀行は反社会的勢力との繋がりがあるかどうかを非常に警戒しています。
口座開設を希望する会社自体に違法性がなくとも、代表者や従業員が反社会的な人物と関わりがないとは言い切れません。
会社を経営する以上、経歴や人となりが世間一般に知られるリスクは多少なりとも生じるでしょう。
堂々と活躍できる信用性の高い会社に育てるためにも、経歴や事業への思いなどの情報は積極的に公表することをおすすめします。
資本金額が低い
昔は資本金が1,000万円以上でないと株式会社を登記することはできませんでしたが、商法改正によって2006年4月から資本金の制限が撤廃となり、「1円起業」が可能となりました。
しかし、資本金があまりにも低い金額で設立した会社は社会的信用を得られにくい場合もあります。
低い目安は業種や金融機関によっても異なりますが、最低でも100万円くらいは資本金を準備しておいた方がよいでしょう。
登記住所が自宅やシェアオフィス
「オフィスの実態があるかどうか」は法人口座の審査で銀行が注視するポイントの一つです。
法人口座開設申し込み時に提出する書類の一つに「登記簿謄本」がありますが、これに記載されている住所が自宅やバーチャルオフィス、シェアオフィスの場合には信用性が高いとは言えなくなります。
オフィスを借りるというのはそれなりに費用が必要になるため、銀行としても審査においてプラスとなりやすいです。
固定電話がなく携帯電話
最近ではわざわざ固定電話を最初から契約する企業は多くはないのですが、銀行としてはいざという時に連絡が取れなくなることを恐れていたり、昔の名残もあるようで信用性について担保ができないと判断されることにも繋がりかねないようです。
ただ、店舗ビジネスなどでない限り、固定電話を持つメリットがあまりないことも多く、無理して持たなくても良いかと思います。
ネット銀行とメガバンクで法人口座を作る際の違いとは
ネット銀行とメガバンクでで法人口座を作る際の違いとしては、面談があるかないかが大きな違いです。
一般的にはメガバンクの方が審査について厳しいイメージがありますが、必ずしもそうとは言い切れません。
ネット銀行とメガバンクでで法人口座を作る際のポイントについて見ていきましょう。
ネット銀行で法人口座を作る際のポイント
ネット銀行の方がメガバンクと比べて振込手数料が安く、口座維持手数料もかからない場合が多いためまずはお申し込みをしておくことがおすすめです。
ただ、ネット銀行は面談がないので法人口座を作る際に審査基準が緩いと思われがちですが、そうとも言い切れませんので注意しておきましょう。
なぜかというとネット銀行の場合には対面でのやり取りがない分、会社としてスコアリングが悪いと挽回の余地が無いからです。
ネット銀行で審査時に提出する代表的な書類は以下の5点となります。
- 法人のビジネス口座開設申込書
- 全部事項証明書 ( 登記簿謄本 )
- 本人確認資料(運転免許証、住民基本台帳カード等)
- 事業実態を確認できる資料(ホームページ、各種契約書等)
- 法人ビジネス口座開設申込委任状兼実質的支配者に関する届出書
これらの提出書類はネット銀行によって若干異なりますが、概ね上記書類の提出を求めているところが多いようです。
また、ネット銀行の場合固定電話がないとそもそも口座開設申請できないところも多く、楽天銀行と住信SBI銀行は申し込み自体できません。
ネット銀行で法人口座を作る際のポイントは、「固定電話を持つ」、「資本金をある程度以上にする」、「独自ドメインのホームページを持つ」、「SNSなどの投稿を綺麗にしておく」ことがあげられそうです。
ネットバンキングでは残念ながら楽天銀行と住信SBIネット銀行は固定電話以外の入力ができませんので、GMOあおぞらネット銀行は携帯電話でも申込みが可能のためおすすめです。
メガバンクで法人口座を作る際のポイント
メガバンクは法人口座の中でも一番審査が厳しいイメージがありますが、メガバンクで法人口座を作る際のポイントにはどのようなところがあるのか見ていきましょう。
メガバンク で 法人口座 を持っておくと、ゆくゆくは融資にも利用ができますし、支店も比較的多いので振り込み手続きなども窓口やATMで行いやすい特徴があります。
また、大手企業などとの取引先にメガバンクの法人口座を持っておくと企業としての信用度が増すこともメリットの一つでしょう。
メガバンクで法人口座を作る場合、審査には「書類」と「ヒアリング」の2種類があります。
メガバンクで法人口座を作る際に必要な書類とは
口座開設の申込時には最初にネットで法人情報を入力したり、必要な書類を提出した上でヒアリングが行われることが多いです。
銀行によっても多少違いはあるものの、必要な書類を8つご紹介します。
1、 全部事項証明書 ( 登記簿謄本 )
2、 法人の印鑑証明書
3、 株主名簿 ( 出資者名簿 )
4、 法人印鑑 ( 銀行印 、 会社実印 )
5、 来店者の本人確認証明書
6、 会社定款
7、 会社のマイナンバー ( 法人届出番号 )
8、 各銀行ごとの申込み書類
会社定款は出さなくても大丈夫な銀行もありますが、念のため用意しておきましょう。
僕が三菱UFJ銀行で口座を開設した際には定款は不要でした。
メガバンクで法人口座を作る際に聞かれる項目とは
実際に面談の際にはおおよそ1時間程度、銀行の方とお話をすることとなります。
ちなみに三菱UFJ銀行の場合には三菱UFJ銀行の方ではなく、子会社の三菱UFJキャピタルパートナーズ社の方が面談担当でした。
- 代表者のプロフィール
- 会社の主な事業内容は何か(複数ある場合は優先付けも必要)
- 会社の実質的支配者は誰か
- どのような事業計画で事業を行っているのか
- 法人口座開設の目的は
あたりはよく聞かれる項目ですので、予め抑えておいた方が良いかもしれません。
もちろん面談の担当者の方が審査を決定するわけではなく、実際に審査をするのは審査部門などのようで5名程度で行われているようでした。
メガバンクで法人口座を作る際のコツ
メガバンクでは面談担当の方に書類を提出するととともに、上記のような自己紹介となぜこの事業をやるのかといった説明も求められます。
社名や代表者名を元に、ある程度事前にネットで情報を調べているようで僕のことも経歴などを把握していました。
- 代表者の経歴
- 代表者の評判
- 代表者のSNS
といったことも見ているとのことです。
銀行の口座開設時に注意しておきたいのがSNS関連で、ふざけた投稿が多ければ削除するか、友人以外は見れないようにするなどあらかじめ対策を必ずしておきましょう。
意外にも 2チャンネル などの掲示板も見ているようで、あまりにも悪い書き込みがあると、 信憑性 は別として 口座開設 が厳しくなるとのことでした。
若い時の投稿などが意外と残っていたりする可能性もありますので、一度確認しておくことがおすすめです。
面談でしっかりとした対応をすることで、法人や代表者個人としても担当の方に良い印象を与えることができますので、法人口座で断られる理由として挙げた項目についてスコアリングが悪くても諦めずに頑張りましょう!
さらに会社設立間際でまだ知名度や信用度が高くない場合に 法人口座 を 開設する際 の 重要 な コツ が、「 会社名の入った書類は多ければ多いほど良い 」ということです。
僕の場合、上記でご紹介した必要書類に加えて、
- 取引先への見積書
- 取引先への請求書 、 自社宛の請求書
- 取引先との契約書
をメールで銀行担当の方に送りました。
特にこの中で取引先への請求書は売上があるという証拠にもなりますので、審査においてプラスとなる要素ではないでしょうか。
会社設立間際 では上記のような書類がまだ用意できない可能性もありますので、緊急性が高くなければしばらくは個人口座でやり取りを行い、取引で見積書や請求書ができる段階になってから 法人口座 を開設した方が、審査を通過できる可能性が高まると考えられます。
法人口座を開設する銀行に個人口座があると有利になりやすい?
法人口座を開設する銀行に代表者が個人名義の口座を持っている銀行だと有利になりやすいという話を聞いたことはありますでしょうか。
法人としては初めての口座開設になりますが、個人口座を持っていると預金残高や過去のお金の入出金がわかるために法人口座を作りやすいと言われています。
実際僕も三菱UFJ銀行の同じ支店に個人口座を長年持っていて、会社員時代の給与振込なども行っておりました。
メガバンクに知り合いがいると口座開設の際に有利になるのではないかと思われがちで、実際に自分も少し考えていたので連絡をしてみたのですが、融資の際に担当者を紹介してくれて話を通しやすくしてくれる可能性はありそうなものの、口座開設はそこまで影響がないようです。
法人口座の審査が比較的柔軟な銀行はどこか
気になる方も多いかと思いますが、法人口座の審査が比較的柔軟な銀行はあるのでしょうか。
個人的な意見も含めてですがネット銀行ですとGMOあおぞらネット銀行、メガバンクですとみずほ銀行が会社設立後のスタートアップ企業の口座開設に積極的と言われています。
GMOあおぞらネット銀行
参考:GMOあおぞらネット銀行
ネット銀行では固定電話がなくても申し込みができるGMOあおぞらネット銀行がおすすめです。
GMOあおぞらネット銀行はweb上で口座開設書類の提出が出来て口座開設が早いこと、ネット銀行の中でも振込手数料が一番安いこと、新しいネット銀行ということで積極的に法人口座の開設を行っていると予想されることもポイントです。
実は一度他のネット銀行で審査落ちしてしまい口座開設ができないことがあったのですが、GMOあおぞらネット銀行では僕も以下のように開設ができてデビットカードも申し込みをしました。
下記の画像がログイン後の画面です。
GMOあおぞらネット銀行のUI、UXですが、メガバンクなどと比べてもシンプルで使いやすいデザインと言えるでしょう。
今のところ使い勝手が悪いと感じているところはありません。
より詳細にGMOあおぞらネット銀行についてご確認したい方は、以下の記事もオススメです。
ちなみに私の会社で利用している様子をGMOあおぞらネット銀行さんの導入事例として追加いただきました。
ネット銀行の場合にはわざわざ面談に行かなくても良いので、あまり自信がなくてもまずは申し込みだけしてみて様子を見ても良いと思います。
みずほ銀行
参考:みずほ銀行
理由としてはメガバンクの中では規模が一番劣るために多少条件が悪くても口座を確保しておきたいのではないかと予想してます。
ゆうちょ銀行
参考:ゆうちょ銀行
実は銀行の中で意外と見逃せないのが ゆうちょ銀行 です。
ゆうちょ銀行は支店数も多いですし、法人口座はインターネットバンキングが無料で使えるというのもメリットとして大きいです。
面談も不要で書類だけ出せば後は結果が送られてきますので、預け入れ上限が1,300万円という制限がありますが設立間際の会社としては十分かもしれません。
その他に地銀や信用金庫の場合には地域の企業を応援するというミッションがあるため比較的審査が緩いという声もあります。
支店やATMが少ないというデメリットもありますが、自宅や会社の近くにある場合には検討してみても良さそうです。
メガバンク、ネット銀行、ゆうちょ銀行についてもう少し詳しくまとめた記事もありますので、興味があればご参照ください。
法人口座の審査が落ちて開設が断られた場合の対処法
審査で気をつけたいポイントを踏まえた上で法人口座に申し込んだとしても残念ながら審査に落ちてしまう場合もあります。
落ちてしまった際には理由を考えることも必要ですが、例えば資本金が低くても手持ちのお金に余裕がない場合などすぐに解決が難しいこともあるでしょう。
法人口座の審査が落ちて開設が断られた場合の対処法について見ていきましょう。
他の銀行に申し込んでみる
一つの銀行に落ちてしまってもまだ諦めるのは早いです。
銀行の審査基準は共通点も多いですが、メガバンク、ネット銀行、地銀など銀行の形態によっても異なりますし、その中でも独自の審査基準を設けている場合もあります。
まずは優先順位をつけた上で申し込みを行ってみるのが良いと思いますが、もし落ちてしまった場合でも一旦他の銀行に申し込んでみることを検討してみましょう。
落ちた理由を考えて対処する
落ちた理由で見当がつきそうなものがあれば対処することも重要です。
独自ドメインのサイトがなければ作成してみた方が良いですし、業務内容が分かりにくければパンフレットを作成して担当者に渡すのも効果的かもしれません。
少し時間をあけてみる
緊急に法人口座が必要なければ少し時間をあけてみてから申し込みを行うことも一つの手段です。
その間に売上が上がれば信用性が高まることにも繋がりますし、利益が出れば増資を行うことも検討してみましょう。
同じ銀行の場合には少なくとも半年、出来れば一年くらいは開けた方が良いと思いますが、他の銀行の場合には3ヶ月などもう少し短くても良いと思います。
実は僕も会社設立の際に当時のジャパンネット銀行で法人口座を申し込んだのですが、以下のように審査に落ちてしまいました。
理由としては「資本金が少なかったこと」、「固定電話が無いこと」が大きいような気がしました。
当時はまだGMOあおぞらネット銀行が無かったために時期をずらしたということもありますが、GMOあおぞらネット銀行では上記でみていただいた画像のように法人口座の開設が出来たため、自分の経験上からも会社設立したてで審査にあまり自信がないという方でも申し込みをしても良いかもしれません。
法人の銀行口座開設完全ガイド
銀行の法人口座開設は年々審査が厳しくなっているのが実情です。
そのため、法人口座を開設するためには銀行口座開設の目的と事前準備をしっかりと確認しておき、戦略的に行うことがおすすめです。
実際に私が法人口座を開設した経験を踏まえて参考になりそうな記事をまとめてみましたので、ご関心ありましたら参照いただければと思います。
法人口座が作れない理由と審査基準を抑えて対策をしておこう
一般的にはメガバンクよりもネット銀行の方が審査が通過しやすいと言われていますが、上記でご紹介したように審査を通過するためにはポイントを押さえた準備をする必要があることには変わりがありません。
法人の銀行口座は個人と違って審査があるため開設まで時間がかかることが多く、特にメガバンクの場合には概ね2週間から1ヶ月程度は見ておいた方が良いです。
1つの銀行だけだと断られてしまうこともありますので、できればメガバンクとネット銀行など別の組み合わせで複数開設申し込みをすることがおすすめです。
一度審査に落ちてしまってもしばらくしてから再度申し込みをすることもできますので、あまり気張らずに申し込みをしてみても良いでしょう。
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