【2020年版】メアリー・ミーカー氏のインターネットレポート記事の解説

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【2020年版】メアリー・ミーカー氏のレポート記事の解説

米国のベンチャーキャピタル「Bond Capital1」(以下BC)が、同社投資先を対象として「ポストCOVID-19後のマーケット」を分析したレポートをリリースしました。

同社のパートナーであるメアリー・ミーカー氏(以下ミーカー氏)が毎年発行している「Internet Trend Report」は、多くの投資家や起業家、IT関係者から定評があるレポートです。

今年は内容が例年とやや違っているのですが、最新のマーケットの動向や今後提唱される新しいワークスタイルを模索すべく、2020年のメアリー・ミーカー氏の最新レポートをご紹介いたします。

参考:Exclusive: Mary Meeker’s coronavirus trends report

Mary Meeker(メアリー・ミーカー)さんについて

Mary Meeker(メアリー・ミーカー)さんは、アメリカ合衆国出身のベンチャーキャピタリストです。

コーネル大学で金融におけるMBAを取得した後、ウォールストリートのモルガン・スタンレーにて主にインターネット分野の証券アナリストとして20年ほど活躍をしていました。

2014年には米フォーブス誌の「世界で最も影響力のある女性」部門で77位に選出されています。

レポートの発表を行っているBond Capitalは、テック系ベンチャーを主な投資先企業とするシリコンバレーのベンチャーキャピタルの一つです。

投資先でExitした案件ではFaceebook、Twitter、Spotifyなどがあり、現在ではAirbnb、Slackなどに投資をしているようです。

今回の新型コロナウイルスに関して、拡散力とマーケットにもたらす影響力は1906年のサンフランシスコ地震の時と同等であると述べています。

2020年のレポート「Our New World」について

ミーカー氏を中心に執筆された約28頁にわたる2020年のレポート「Our New World」(私たちの新世界)について見ていきましょう。

例年はインターネットに関するレポートになりますが、今年はコロナウイルス終息後(あるいは渦中)に私たちの世界感、生活規範が変化することを前提に書かれています。

以下5つのトピックをご紹介いたします。

グローバルでの爆発的な伝染力

グローバルでの爆発的な伝染力

最初の3つのトピックは以下になります。

  1. COVID-19 = Shock + Aftershocks
  2. Viruses + Microbes = Consistent + Periodic Agents of Disaster
  3. Creative Innovators (Globally + Together) Will Rise Above the Virus

初めて中国でコロナウイルスの陽性患者が出てからいかに世界中に伝染していったか、そのスピード感とインパクトが示されています。

同時に、人々が以前の生活を取り戻しながら経済活動を再開できるよう、現状の対策だけでなくコロナ終息後の対策を熟考することが求められています。

3点目のトピックでは、タイトルの通り、グローバル規模のクリエイティブなイノベーションがいかにしてコロナウイルス終息へと繋がるのかを言及。

特に医療と公衆衛生の分野で、世界の国々の権威が知恵を持ち寄って協力していかなければならないとされており、また日々コロナウイルスが蔓延し続ける中で、我々に時間的猶予はない、ということが協調されています。

新型コロナウイルスの影響を受けた変化

4つ目はRapid Changes Drive Growth in Both Directionsです。

こちらのトピックでは、コロナウイルス発生後に私たちの生活がいかに変容を遂げたかが示されており、それは私たちにとって最も身近で重要なテーマと言えます。

私たちの日々の消費者行動は、コロナ禍での商店や娯楽施設のクローズなどにより、予告もなくスローダウン、あるいは完全に停止してしまいました。

その一方で、コロナウイルスはテクノロジーの発展など思わぬ恩恵をもたらしたことも事実です。

メアリー・ミーカーさんの提起を抜粋したものが以下になります。

科学者やエンジニアなど、その道の専門家たちの議論が再び活発になりつつある

アメリカの経済発展のキーを握るグローバルカンパニーは、主にMicrosoft、Amazon、Apple、Google、Facebookなど。

これらの企業が成功を収めたのは、データ、実行、検証、機械工学そして科学に基づいた中長期的な戦略とビジョンが明確であったためであると。

今回のコロナウイルスは、これらの中長期的施策がいかに重要であるかを顕在化させたと言っても過言ではありません。

会社の規模は違うかもしれませんが、私たちも会社の中長期的な戦略やビジョンについて再度見直すきっかけとなるのではないでしょうか。

日本では東日本大震災が起きた後に会社のビジョンやサービスなどを見直したケースも多く、今回も同様のことが考えられると思います。

ワークスタイルが見直される契機に

ワークスタイルが見直される契機に

近年の働き方改革と合わせて、働き方が大きく変わりつつあります。

起業家たちはeBay、Etsy,Upwork、Airbnbといったオンラインビジネスをローンチし、新たなマーケットを作り出してきました。

また、Uber、DoorDash、Instacartといった新たなオンデマンドサービスも登場。

AUtomattic、Zappier、GitLabといったスタートアップは、ワーカーたちのリモートワークの快適化に一役買っています。

今回の新型コロナウイルスを受けて、Zoomが提供するビデオミーティングサービスのユーザーが爆発的に増え、オフィスに行かずに「家で働く」のが主流になったのではないでしょうか。

日本ではまだリモートワークの導入が遅れている会社が多かったですが、社会的情勢の影響や国の補助金もあり一気に見直しがかかったと言えるでしょう。

デジタル化がさらに加速

昨年度のビジネストレンドを振り返っても、やはりデジタル化の流れが陰りを見せることはないでしょう。以下のような例があります。

  • レストラン:店内での飲食からUberEatsなどを使ったピックアップデリバリーへシフト
  • 学校:生徒たちは端末を使ってオンラインクラスを受講するように
  • 日用品:買い出しにはいかず、ECサイトで購入
  • 病院:対面での診察からオンラインでの診察へシフト
  • 企業:紙面ではなくクラウドをベースとした情報管理へ

日本でも近年デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉を聞く機会が増えてきましたが、個人的には過去のビッグデータなどのように何となく言葉だけが先行している感も否めないと感じていました。

新型コロナウイルスではオンラインに強みを持っている企業や知見がある企業と、出遅れている企業では影響が大きく異なることも少なくないと思います。

今回を機にデジタル化に出遅れている企業は再認識をして、対応を行い始めて見ても良いと思います。

そのためには経営陣を始めとした、やや年配のデジタルにあまり強くないレイヤーの方々の意識から見直す必要があるでしょう。

オンデマンドサービスにニーズシフトが起こる

近年オンデマンドサービスへのニーズがさらに高まる中、今回のコロナウイルスで、業界のフロントランナーとも言える企業がネガティブな影響を受けたのも見逃せません。

例えば配車サービスのUberやLyft、旅するような暮らしを実現する宿泊サービスのAirBnBなどがその代表例です。

その一方、食料品デリバリーサービスのInstacart、DoorDashなどのユーザーが増え、オンデマンドサービスのニーズシフトが始まっていると言えるでしょう。

2020年=テクノロジー分野および医療分野のステップアップ元年の可能性

意外に聞こえるかもしれないが、米国の医療介護の状況は、1918年のスペイン風邪以降大きく変化していないようです。

新型コロナウイルス禍、テクノロジーと医療がジョイントすることで以下のような進歩が生まれることが期待されます。

  • オンライン診療:従来の方法よりも迅速で安価、患者は外出を避けられるので安全
  • デバイスの活用:対面ではなくインターネットを通じたモニタリングをすることで、感染症のアウトブレイクを避けることができる
  • AIの活用:今回の感染症のような場合、医療従事者の度を越えた労働量を減らすことに繋がる

新型コロナウイルスの先にある社会とは

新型コロナウイルスの先にある社会とは

締めくくりとして、最後のトピックである
The World Just Doesn’t End That Often = We Will Get Through This… But Life Will be Different
を見ていきましょう。

トピックのタイトルにもなっているこの文言は、2008年の金融危機の際T. Rowe Price社の会長・CIOであったBrian Rogers氏によるものです。

この発言を引き合いに出しながら、ミーカー氏は「…しかし、私たちの生活は変わってしまう」と述べたうえで、新型コロナウイルス後の私たちの生活や価値観の変容について、最終的に以下の6点についてまとめています。

  1. 主体性のある政府機関の発展とともに、医療、また教育の分野がローコストかつ効率的なものになっていく
  2. 政府機関と企業の連携が強まり、一般の人々がその恩恵を享受できるようになる
  3. 個人のスキルや生活スタイルに合致した働き方ができるようになり、それに応じたトレーニングの機会も増える
  4. むやみな浪費を避け、賢い消費者となること求められるようになる
  5. 家で家族と過ごすなど、人としての基本的な幸せを重要視する人が増える
  6. 家族との繋がり、人生の目的の明確化、コミュニティー、信仰心などに人生の価値を見出していく

ベンチャー投資家ならではの視点で、特にテクノロジーと医療のジョイントによって、今後大きなイノベーションが起こるであろう未来を予測しています。

コロナウイルス終息後の価値観の変容を把握する上では、レポートを一読しておいても良いでしょう。

企業だけではなく、個人のライフスタイルの見直しも

今回のレポートは基本的には企業向けになりますが、個人のライフスタイルにおいても見直しのヒントになることがあると思います。

ビジネスを提供する側の視点、会社で働く側の視点、ビジネスを利用する消費者側の視点といった点から見ると様々な気付きにも繋がるでしょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

証券会社、IT企業役員、ベンチャー企業などを経て2016年10月より独立。2017年7月株式会社Milkyways設立、代表取締役CEO。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻(WBS)修士課程卒。専攻はベンチャー企業論、ベンチャー経営論。趣味はダンスとラーメン。