貸借対照表(BS)の見方について初心者でもわかりやすく解説

194 PV

貸借対照表(BS)の見方について初心者でもわかりやすく解説

会社の経営状況を表す決算書の中には貸借対照表と呼ばれているものがあります。

貸借対照表は損益計算書と合わせて作成する必要があり、見方がわかると会社についてもっと詳しくなることができるはずです。

今回は貸借対照表(BS)の見方について初心者でもわかりやすくご紹介いたします。

貸借対照表とは

貸借対照表はBalance Sheetの日本語訳で、略してBSとも呼ばれることが多いです。

大きく左側と右側に分かれ、左側には資産、右側には負債と純資産があります。

資産、負債、純資産のそれぞれについて確認していきましょう。

資産

資産は会社の収益の元となる重要な要素です。

例えば現金預金、売掛金、株式などの有価証券、車や建物などが挙げられます。

現金預金はお金そのものですし、株券や車は売却することで収入につながります。
したがって、これらのものは貸借対照表で資産に表示されます。

負債

負債は将来の支出につながるものです。

負債の具体例は金融機関からの借入金やクレジットカードの未払金、買掛金などが挙げられます。

これらのものは将来に支払う義務があり、支出につながるため負債になります。

純資産

純資産は資本金や過去の利益を蓄積した内部留保のことです。

資本金とは、株主から会社へ出資されたお金のことです。

詳細は後述しますが、初めのうちは純資産を資本金と考えて問題ありません。

重要なポイントは、負債と純資産を区別することです。

負債は将来の支出があるのに対して、純資産は基本的に将来の支出がありません。

配当金で会社から株主へお金を支払いますが、配当金の支払いは義務ではないため負債のような強制力がありません。

貸借対照表のルール

貸借対照表には、以下の基本的なルールがあります。

  1. 一時点の情報であること
  2. 左側と右側の合計は必ず一致すること
  3. お金で表せないものは表示されないこと

まず、「ある一時点の情報であること」は、貸借対照表は会社の財産を写真のように切り取った情報であるということです。

詳しくいうと貸借対照表には必ず「〇年〇月〇日」という日付が記載されます。

つまり貸借対照表はこの日付に会社が持っている資産や負債の状況を表しているということです。

補足として損益計算書の日付では「〇月〇日~△月△日」という期間が指定されます。

損益計算書は期間の流れを表す情報のため「フロー情報」といい、それに対して貸借対照表はある一時点の「ストック情報」と言われます。

次に、貸借対照表の左側の合計と右側の合計は必ず一致します。

つまり、以下の式が必ず成立するという意味です。

資産の合計 = 負債の合計 + 純資産の合計

左側と右側が一致する理由は、簿記の仕組みが関係しています。

簿記では様々な場面で、左側と右側が一致することで間違いが無いことを確認します。この性質から、貸借対照表も必ず左側と右側が一致します。

反対に一致しなければどこかに間違いがあることになります。

最後に、貸借対照表はお金で表せないものは表示されません。

例えば100年の歴史というブランドがあるお店でも、100年の歴史はいくらの金額価値があるのかわかりません。

このようなお金で表せないものは貸借対照表に表示されません。

初心者でもわかる貸借対照表の見方

経営者が経営改善に生かす、あるいは投資家が経営状況を適切に判断するには、貸借対照表の項目を利用した分析が必要です。

貸借対照表にはどのようなチェックポイントがあるのか、代表的な経営分析と計算方法を紹介します。

流動資産・流動負債

貸借対照表を見れば、会社の資金繰りがうまくいっているかどうかを分析することができます。

短期的な資金繰りを確認するのに注目したいのが、貸借対照表の各部門の項目のうち、「流動資産」、「流動負債」に分類されるものです。

前述のように、貸借対照表の流動資産は、営業循環の中の会計科目か1年以内に回収する会計科目で、流動負債は1年以内に支払う義務のある会計科目になります。

いずれも短期間のうちにキャッシュ(現金)が動く項目になるため、両者を比較することで会社の資金繰りに問題がないか確認できます。

計算方法は特にありませんが、基本的には「流動資産>流動負債」になっていれば、当面の資金繰りには大きな問題はないといえるでしょう。

流動比率・当座比率

会社が支払い能力を十分に有しているか分析したいなら、「流動比率」や「当座比率」といった分析があります。

流動比率は、流動資産と流動負債の割合のことです。以下の計算方法で、流動比率を求めます。

流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

流動比率は高いほど、支払い義務のある流動負債の支払いをカバーできると考えられます。少なくとも100%以上は確保しておきたいところです。

なお、流動資産の中には、貸倒れになるかもしれない債権、現金化が遅れるかもしれない債権も含まれますので、100%を超えて、高ければ高いほど、返済不能になるリスクを回避できると考えられます。

当座比率については、以下の計算方法で求めます。

当座比率(%)= 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

ここでの「当座資産」とは、不確実性の高い棚卸資産などを除いた現金など、より流動性の高い資産を指します。

流動比率よりも、より確実性の高い支払い能力をチェックすることが可能です。

自己資本比率

「自己資本比率」とは、何かに対する貸借対照表の自己資本の割合ということになります。

自己資本と比較する「何か」とは、総資本(負債と純資産の合計)です。計算方法は以下のようになります。

自己資本比率(%) = 自己資本÷総資本 × 100

上記の計算式を使えば、割合が大きいほど、総資本における自己資本の割合が多いと判断できます。

自己資本比率が大きければ、返済の義務がある負債は少ないと考えることができ、負債による倒産のリスクは減ります。

反対に自己資本比率が小さければ、それだけ負債の割合が大きいということです。自己資本比率は、小さければ小さいほど財務の健全性は低いと判断されます。

自己資本利益率

「自己資本利益率」とは、自己資本と当期純利益を比較した割合のことです。

意味としては、自己資本からどのぐらいの利益を生み出しているかを表します。

計算式は以下の通りです。

自己資本利益率(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

なお、自己資本は株主資本の合計のことです。

自己資本利益率は、大きい方が利益を生み出しているため望ましいです。

また株主の観点からすると、株主が出したお金をうまく運用しているかどうかを判断する数値になるため重要な指標になります。

負債比率

「負債比率」とは、負債と自己資本を比較した割合のことです。

計算式は以下の通りです。

負債比率(%)= 負債 ÷ 自己資本 × 100

式の意味としては、株主資本(自己資本)のうち負債(他人資本)がどのぐらいあるのかを表します。負債比率の目安は業種によって様々です。

負債比率は小さいほど負債が少ないことを意味しますが、小さいほど良いということでもありません。

負債比率が小さいほど安全性が高くなりますが、反対にいうと消極的ということでもあります。

貸借対照表の資産の詳細

貸借対照表の資産はある一時点の情報で、会社が持っている資産の情報です。

さらに資産は流動資産と固定資産に分かれます。

流動と固定というのは、1年を基準にしてお金になるかならないかを区分して表したものです。

貸借対照表では1年基準またはワンイヤールールというルールがあり、1年以内にお金になるものは流動に表示し、1年以上かかってお金になるものは固定に表示します。

流動資産

流動資産は、1年以内にお金になるものです。

文字通り「流動」のため1年以内に、「資産」のためお金になるものです。

流動資産の具体例は以下があります。

  • 現金
  • 預金
  • 株式などの有価証券
  • 売掛金
  • 短期貸付金
  • 棚卸資産

現金や預金はお金そのもので、それ以外は基本的に1年以内に収入につながるものです。

固定資産

固定資産は、1年以上かかってお金になるものです。

文字通り「固定」のため1年以上であり、「資産」のためお金になるものです。

固定資産の具体例は以下があります。

  • 土地
  • 建物
  • 機械
  • ソフトウェア
  • 長期貸付金

固定資産は、基本的にすぐにお金にするのが難しい資産です。

補足として、固定資産は有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分かれます。

建物は物理的な形があるため有形固定資産になり、ソフトウェアは形が無いため無形固定資産になります。投資その他の資産は、投資目的の不動産や株式などがあります。

貸借対照表の負債と純資産の詳細

貸借対照表の右側は、負債と純資産です。

負債と純資産は、お金を支払う強制力や義務で区別します。

負債はお金を支払う義務があるのに対して、純資産はありません。

それぞれ内訳を確認していきましょう。

流動負債

流動負債は、1年以内にお金を支払うものです。

1年基準は流動資産、固定資産でも説明した通り負債にも適用されます。

流動負債の具体例は以下の通りです。

  • 買掛金
  • 未払金
  • 短期借入金
  • 賞与引当金

流動負債は、1年以内にお金を支払うものが該当します。

詳しくは後述しますが、すぐにお金になる流動資産とすぐに支払う流動負債を比較することで会社の短期的な支払能力を分析することができます。

固定負債

固定負債は、1年以上かかってお金を支払うものです。

固定負債の具体例は以下の通りです。

  • 社債
  • 長期借入金
  • 退職給付引当金

固定負債は上記のような1年以上支払うものが該当します。

なお、退職給付引当金は従業員の退職金を表したもので、基本的に退職まで1年以上はかかるため固定負債に分類されます。

株主資本

純資産は以下の3つに分かれます。

  • 株主資本
  • 評価換算差額等
  • 新株予約権

初めのうちは、評価換算差額等と新株予約権は無視しても問題ありません。

株主資本は、株主から出資されたお金を表します。

特に最初に出資された部分を資本金といい、資本金を元手にして増やした利益部分が利益剰余金として表示されます。

負債との区別でも説明しましたが、株主資本は返済する必要がありません。

株式資本は会社にとって自分のお金ということができるため、自己資本と呼ばれることがあります。

それに対して負債は他人から集めたお金のため他人資本と呼ばれることがあります。

貸借対照表を正しく理解して決算書を読み解こう

一般的に広く使われている勘定式の貸借対照表は、左側に資産、右側に負債と純資産を並べることで、企業の財政状況を示します。

重要なのは、貸借対照表を正しく読み取って、企業の経営状態や財務状況などの分析に役立てることです。

貸借対照表を活用して分析を行えば、短期的または長期的な資金繰りのチェック、健全性チェックなどができます。

分析結果を踏まえて、財務的な面から会社をより良い方向へと導きましょう。

MBA専門の転職・人材サービス MBA JOBs

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUTこの記事をかいた人

証券会社、IT企業役員、ベンチャー企業などを経て2016年10月より独立。2017年7月株式会社Milkyways設立、代表取締役CEO。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻(WBS)修士課程卒。専攻はベンチャー企業論、ベンチャー経営論。趣味はダンスとラーメン。