外資系企業への転職、働く際に求められる英語力のレベルと実務での注意点

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外資系企業へ転職を考えている方や関心がある方にとって一つの目安となるのが英語力です。 実際にどの程度の語学力が求められているのか気になる方も多いのではないでしょうか。 今回は外資系企業への転職、働く際に求められる英語力のレベルと実務での注意点についてご紹介いたします。

外資系企業へ転職を考えている方や関心がある方にとって一つの目安となるのが英語力です。

実際にどの程度の語学力が求められているのか気になる方も多いのではないでしょうか。

今回は外資系企業への転職、働く際に求められる英語力のレベルと実務での注意点についてご紹介いたします。

近年の外資系企業の概況について

経済産業省が行った第53回(2019年)外資系企業動向調査によると、外資系企業の数(アンケート回答ベース)は3,287社で前年度比0.6%増加とあまり変化していない一方、常時雇用従業員数は 55.2 万人で前年度比 11.6%増加と二桁以上の伸びとなっています。

ここ2年は減少が続いていた反動とも言えそうですが、底堅い雇用とも見ることができます。

近年の外資系企業の概況について

参考: 経済産業省 第53回外資系企業動向調査

世界各国でクローバリゼーションが進む中、日本においても外資系企業は就業先としてますます身近なものとなってきていると言えるでしょう。

また、日本で事業展開する上での魅力は、「マーケットとしての魅力」が(62.4%)で最多で、一方、日本で事業展開する上での阻害要因は、「人材確保の難しさ」(57.6%)が年々増加傾向にあります。

外資系企業の採用現場において「人材確保の難しさ」は「仕事の能力は高いが、語学ができない」という要素が大きいと考えられていることも見受けられます。

外資系企業へ転職、働くには英語力は必須か

世界の人口は70億人を超えており、そのうち英語を話している人は約15億人いると言われています。

わずか21%と思われるかもしれませんが、分母から中国、インド、ロシアといった大国を除くと、英語を話している人の割合は決して低いとは言えません。

英語を母国語としている英国、米国、オーストラリア等を除くと、ヨーロッパ諸国をはじめ、インド、フィリピンなどのアジア諸国、アフリカで最も人口が多いナイジェリアなどで英語が第二言語として使われています。

第二言語として英語を使っている割合は、英語を話す全人口の7割を超えていると言われており、英語が世界共通言語と言われれる大きな理由の一つとなっています。

したがって外国人の上司、同僚、部下、クライアントと意思疎通をはかるうえで英語は重要かつ基本的な手段となります。

英語で正しく意思疎通をはかることは外資系企業で働くうえでのファンダメンタルと言っても過言ではないでしょう。

ハンディキャップの大きい日本語

ハンディキャップの大きい日本語

ところが先進国の中では残念ながら日本は英語が通じない国の代表格と言われてしまっています。

日本はどこに行っても日本語だけで済んでしまう島国ですので、歴史的に他国と隣接する諸外国のように母国語以外の第二言語の必要性が希薄です。

それに加え、多くの日本人は英語を学ぶことが苦手です。

これまでの英語教育が十分ではなかったという反省から文部科学省は小学校からの英語教育を本格化させました。

しかし、日本人が英語を苦手とする理由は英語教育の問題だけではなく、そもそもGlobal Standardから外れた日本語の構文自体が英語を理解しにくいものにしているからとも考えられています。

日本語の構文

日本語の構文の基本はSCOVです。

日本語の例:「主語」→「修飾節」→「目的語」→「動詞」
日本語:私は・多くの人がいる・レストラン・が嫌いです。

英語の構文

一方、英語をはじめ多くの外国語はSVOCです。

英語の例:「主語」→「動詞」→「目的語」→「修飾節」
英語:私は・嫌いです・レストラン・多くの人がいる。
(I dislike restaurants where there are many people)

この構文上の転置は言語を理解するうえで、大きなハンディキャップになります。

「グラマーが苦手、グラマーは嫌い」となってしまう原因でもあります。





外資系企業における英語レベルの目安について

外資系企業における英語レベルの目安について

では外資系企業で求められる英語力とはどのくらいのレベルなのでしょうか。

求められるレベルはクライアントや自社の社員(外国人か日本人か)、職種(仕事の性質)、職位(管理職か非管理職か)によって異なりますので見ていきましょう。

日本語メインの非管理職レベル

外資系企業であっても、外国の企業が日本企業と共同出資で会社を設立した場合や、外国の企業が日本の企業を買収した場合、担当業務やポジションによっては英語が必ずしも必要になるとは限りません。

お客様や取引先が日本人のみで、商品の説明書、社内のマニュアルやシステムインフラが日本語になっている場合は、特に英語を必要とされません。

また、非管理職の場合、上司が日本人で日本語で指示を受けたり報告をしたり、外国人が参加する会議に出席する必要がなければ、英語ができなくても支障はありません。

ただし、お客様の中に外国人が含まれる場合や、同僚や仕事に関係する部署の社員に外国人がいる場合があります。

その場合、英語でのコミュニケーションが必要となる場面が生じます。

人数の大小に関わらず日常会話程度の内容で外国人と意思疎通を行うためには、少なくともTOEICで700点以上あることが望ましいと思われます。

管理職としての登用条件としてTOEIC700点前後の条件がついている会社も多いです。

中間管理職レベル

実務運営の中核である中間管理職(課長クラス)になると、外国人シニアとのコミュニケーションが必須となりますのでTOEICで800点以上のビジネスレベルは必要になってくることが多いでしょう。

また、中間管理職は採用時に本国の人事担当者とSkypeなどで面接するケースが多々あり、そこでどの程度の英語力があるのか試されることがあります。

そのための指標として800点は重要な目安であるといえます。

ここで求められるビジネスレベルとは、必ずしも流暢である必要はなく、要点を漏らさず正確に聴く(Listening) 、読む(Reading)、話す(Speaking)、書く(Writing)による必要十分な双方向のコミュニケーションができ、その結果、適切な判断や行動に結びつけられることがビジネスレベルの基本です。

コミュニケーションにおいてはリスニングが重要となります。

今や外資系企業は世界中の人が集まる集団と言っても過言ではありません。

様々な国や地域の外国人が働いており、母国語による英語のアクセントも様々です。

多少癖のあるアクセントでも単語を聞き取れる力が求められますが、様々な国の外国人と会話を通じて体得していく必要があります。

聞き取れなかったことや理解できなかったことを問い直すのは決して恥ずかしいことではありません。

また、外資系の企業では、よく単語の頭文字を使った3文字や4文字の略語が使われます。(例:EBIT=earning before income tax, ROI=return on investment, OSB=outstanding balance, BAU=business as usualなど)

これらのビジネス用語は英語のレベルに関わらず業種や業態を超えて使われることが多々ありますので覚えておいた方が良いでしょう。

上級管理職レベル

さらに経営資源の管理、現状分析と将来予測、戦略的な提案を求められる上級管理職(部長、本部長クラス)ともなれば、英語のレベルも流暢であることが求められます。

「流暢」の定義は難しいですが、

  1. 適切な発音ができる
  2. 適切な会話速度が保てる
  3. 世界で広く受け入れらる「単語」「表現」「イディオム(慣用句)」が使いこなせる

と定義されることが多いです。

特に日本人の場合、リスニングやリーディングはしっかり出来る方が多い中、スピ―キングがどこまで「流暢」にできるかということが焦点となります。

高いレベルでの英語力が求められるビジネスシーンは社内の外国人よりも、主にクライアント、ベンダー、協会関係者などの社外の外国人を対象とした対外的な業務です。

これらの業務は会社としての「代表」だったり「顔」としての役割を担いますので、ある程度の権威付けが必要となります。

また、単に言語能力だけではなく、分からないことは遠慮なく質問でき、言うべきことを適切に伝えられるディスカッション能力やプレゼンテーション能力も求められます。

金融・保険・IT・製造業などの専門的な職種においてはその分野ならではの専門用語(Terminology)にも精通している必要があります。

キーワードとなるTerminologyが分からないためにディスカッションについていけないと流暢であるとは言えません。

複雑な商談や難しい交渉の場面においては「ネイティブレベル」が理想的です。

「発音」、「表現」、「イディオム」は経験的、実践的に学ばないとTOEICの教本やCDだけではなかなか身に付きません。

加えてさらに高いレベルで英語が使えるようになるためには、言語的なスキルだけでなく、文化や習慣の違いを理解しておく必要があります。

複雑な商談や難しい交渉の場面ではIce Breakと言われる軽いジョークで緊張を和ませたり、相手の国の料理や名所など文化や自然にちなんだ話題に触れることでより友好的な関係を築くことができます。

英語が必要となる実業務と注意点

英語が必要となる実業務と注意点

では業務において具体的にどのように英語を使うか見ていきましょう。

メール

メールにはある程度の「型」があります。修飾節が続く長文は望ましくなく、簡潔さが求められます。(チャットも同様)

そのような意味では箇条書きが有効です。

もし複雑な内容をメールで伝える必要がある場合は、要点だけをメールに書き、詳細は添付ファイルで読んでもらっても良いかもしれません。

内容によってはメールを送った後に電話でフォローするとより効果的です。

複雑な内容をメールだけで済ませようとすると関係者間の理解が進まず、何度もメールをやり取りして手間が増えてしまいます。

電話、電話会議

非対面での電話や電話会議では、何よりもリスニングが重要です。

相手が何を言っているのか、相手の表情を見ずに正確に聞き取る必要があります。

よく聞こえない場合にはこちらから別の表現や言い方で再確認(Clarify)するスキルも求められます。

資料作成

それぞれの資料に応じて慣例になっている英語の表現を知っているかが重要になってきます。

例えば契約書や規約にはフォーマルな英語が求められます。

他にも技術的な設計書や仕様書などには精緻で専門的な英語、オペレーションマニュアルや取扱説明書には誰でもわかりやすい簡潔な英語など、求めらえるドキュメントによってVocabularyや文章表現が異なります。

これらは既存のドキュメントをよく読んで学習することが有益です。

会議、ディスカッション

問題や目的、情報や条件を共有することで、何等かの結論や方針を導き出す場としては「電話会議」と同じですが、外国人は対面での会議やディスカッションをより重視します。

対面での会議やディスカッションにおいては参加者の身振りや表情などが現れます。

そのような参加者の態度(Behavior)によって、根拠の確証や信憑性、自信の有無、主張の強弱、多数による賛同の度合いなどを確認することができます。

会議やディスカッションに参加する際は以下の点が重要となります。

  1. 主体性を持って臨み、必ず何等かの発言する。(傍観者=不要とみなされないようにする)
  2. 人の話を真摯に聴き、聞き取れなかったこと、理解できなかったことは遠慮なく問い直す。
  3. 自分の考えや意見、事実は躊躇せず、率直に表明する。(ただし重大なエスカレーション=Surprise は避ける。)
  4. 同じことを言う場合もできるだけネガティブではなく、ポジティブな表現を使う。
  5. 丁寧な表現や言葉遣いをする。
  6. 議論において重要なポイントやラップアップ(結論の要点)は必ずメモに取る。

プレゼンテーション、スピーチ

外資系企業では会議、ディスカッションと同様にプレゼンテーションやスピーチも重視されます。

プレゼンテーションやスピーチは、現状分析に基づいた新しいアイデアやソリューションを提案する場であり、上司や同僚に自分の能力や価値をアピールする機会でもあるからです。

プレゼンテーションはPower Pointのスライドショーを使うことが多いと思います。スライドショーを作る際のコツは日本語も英語でもほぼ同様です。

  1. できるだけ図、グラフ、写真などVisualで理解できるようにする。
  2. 長い記述は避け、要点を箇条書き(Bullet Point)にする。

またスピーチは英語の場合も、ゆっくり、はっきりとした発音を心がけることが大切です。

スピーチの原稿はPower Pointのスクリプトに書き込んでおき、もし余裕があればちょっとしたジョークを交えるとよりアトラクティブなものになります。

英語力は継続して高めていきましょう

外資系企業で評価され、成長していくためには、数字での実績=成果を出すことはもちろん、英語での双方向コミュニケーション能力が重要なファクターとなります。

まずは「流暢」であることよりも、相手の話を漏らさず、正確に聞き取り(または提示された資料をしっかりと読み取り)、相手の意図を理解して、それに対する事実や自分の考えを適切に相手に伝え、コンセンサスを得たうえで適切な判断や行動が取れることが何よりも大切です。

英語力はすぐに高まるものではありませんが、継続的に続けていくことで確実に高まっていきますので、これから外資系企業で働いてみたい方、外資系企業で成果を出したい方はチャレンジし続けましょう。





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ABOUTこの記事をかいた人

証券会社、IT企業役員、ベンチャー企業などを経て2016年10月より独立。2017年7月株式会社Milkyways設立、代表取締役CEO。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻(WBS)修士課程卒。専攻はベンチャー企業論、ベンチャー経営論。趣味はダンスとラーメン。