財務会計と管理会計の違い、利用するポイントについて解説

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財務会計と管理会計の違い、利用するポイントについて解説

企業会計には「財務会計」と「管理会計」があり、それぞれ経営において欠かせません。

管理会計は、会社の実情を客観的に把握して、経営方針を立てるための指標となります。

今回は財務会計と管理会計の違い、利用するポイントについてご紹介いたします。

財務会計と管理会計の違い

企業会計は財務会計と管理会計に分かれています。

それぞれの違いについて見ていきましょう。

財務会計は外部報告のための会計

財務会計は、株主や金融機関をはじめとする社外の利害関係者に業績を把握してもらうために提出する会計のことです。

外部報告のための会計とも言えるでしょう。

貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書といった決算時に作成される財務諸表などは、財務会計のための資料にあたります。

金融商品取引法、会社法などの法律や、会計基準に基づいて算出されます。

管理会計は経営分析に生かす社内向けの会計

管理会計とは、自社の経営に活かすために作成する社内向けの会計です。

管理会計は、英語ではManagement Accountingといいます。

財務会計とは違って外部に対して公表するものではないため、必ずしも作成する必要はありません。

そのためデータの収集方法やフォーマット、記載の仕方などに厳密なルールは無く、業界や会社によっても異なっています。

ただし、管理会計の目的は経営管理に役立つ情報を収集して意思決定に繋げていくことです。

管理会計が提供する情報は企業によって異なります。

例として、経営戦略や長期的な経営計画策定のための抽象的な情報や、各部門の予算や目標といった具体的な情報などがあるでしょう。

経営者は、管理会計の情報をもとに、自社の経営について分析したり意思決定を行ったり、製品や人事に関する施策を打つことができます。

期間にも定めはなく、週単位、月単位、年単位と、会社ごとに運用しやすい期間で作成します。

作成する資料は、事業計画書、中期経営計画資料、取締役会資料といったものになります。任意で行うものなので、管理会計を取り入れていない会社もあります。

財務会計と管理会計の起源

財務会計は、中世イタリアですでに存在していたと言われています。

当時は貴族がお金を出して、そのお金で船と乗組員を調達し、船旅をさせます。

ですが、ひと度航海してしまうと、乗組員が金銀財宝を手に入れて、戻ってきたときに報告しなかったとしても、把握することができません。

そこで貴族は、乗組員たちにお金の動きをすべて記録させて、港に戻ってきたら報告させるようにしました。

これが、財務会計の起源です。現代においては、企業が株主に決算を報告する関係性と、同じであることが分かるでしょう。

つまり、財務会計は航海がうまくいっているかを見るのではなく、港にいる貴族のための会計というわけです。

一方、航海がうまくいくためには、天候がどうなるのか、どの方向に舵を切れば目的地に進むことができるのかといった情報が必要です。

これらが管理会計です。管理会計は羅針盤であり、船が向かうべき方向を指し示してくれます。

現代でいえば、業界の動向を読み、管理会計によって経営戦略を立てて実行することになります。

管理会計の種類とは

管理会計の種類とは

管理会計は、「予算管理」や「原価管理」などで構成されています。それぞれの内容を確認しておきましょう。

予実管理

予実管理は予算と実績を管理・確認しながら経営状況を把握するための管理会計です。

会社を経営していくために必要な資源(人材・物資・資金など)を、どのくらい調達すればいいかを把握することができます。

また、一定期間ごとに予算を決めるのと同時に、実績を把握していくことが大切になります。

予算と実績を管理することで、予算に対する達成度合いを確認し、より良いアクションプランを考えていきます。

コスト管理

コスト管理は、製造業を中心に導入されています。

原材料費・人件費・設備費といった原価をあらかじめ把握し、コストを「見える化」していきます。

原価管理を行うには、まずは1つの商品を作るのにいくら原価をかけるのか、目標となる標準値を設定します。

その後、実際にかかった原価と目標の差を把握しながら、適正な原価を探っていきます。

管理会計を導入するメリット

管理会計を導入するメリットについて、具体的に見ていきましょう。

業績の管理がしやすい

例えば、部門別に損益を把握するような管理会計を導入すると、「どの部署(または個人)が、いつまでに、どれくらいの目標を達成すればいいのか」が明確になり、業績の管理や評価がしやすくなります。

売上管理のみならず、バックオフィスの予算管理にも有効です。経営側は社内全体の進捗状況を俯瞰できるようになり、経営計画をスムーズに立てることができるでしょう。

フェアな評価ができる

管理会計を用いて、各部署または個人の目標を設定することで、評価軸が明確になります。一定の指針に基づいたフェアな評価がしやすいでしょう。

経営感覚が身に付く

管理会計を導入すると、各部署の担当者が「自分の部署は予算計画を達成できるかどうか」、「達成するためには何をすればいいのか」といったことを強く意識するようになり、経営感覚を身に付けることができます。

未達成に終わった場合は、その理由を踏まえて次の目標を立てなければならないので、分析力や問題解決力が鍛えられるでしょう。

早めに適切な施策を打てる

管理会計を導入することで、部署別・事業別・商品別など、経営者が知りたい数字を把握しやすくなります。

また、売上・経費・粗利なども管理できますので、経営戦略を立案する上で活用することができます。

「商品をリニューアルする」「事業部をより強化するため人材を投入する」といった施策を、適切なタイミングで検討することができるでしょう。

コスト削減ができる

会社を経営していく上で、予算を達成して売上を増やすことと同じくらい大切なのが、コスト削減です。

原価管理をすることで、原材料費や人件費などのコストを把握することができますので、コスト削減につながります。

管理会計の注意点

管理会計を導入するにあたって気を付けたいのは、社外の第三者に開示するものではなく、あくまで社内で使用するものなので、チェック機能がないことです。

管理会計がきちんと機能しているかは、経営陣が定期的に見直しながら、客観的に判断する必要があります。

また、公認会計士や税理士といった専門家に、管理会計について確認してもらうのもひとつの方法でしょう。

予算管理をサポートしてくれる場合もありますので、活用を検討してみてください。

財務会計と管理会計両方を意識して経営に役立てよう

管理会計は財務会計と違って任意となりますが、経営戦略の指針となるものです。

難しいルールもなく、経営者が欲しいと思う内容に合わせて自由にカスタマイズできますので、スピーディーな経営判断のために導入するべきでしょう。

管理会計を導入する際は、単なる帳簿作成業務としてではなく、会社という“大きな船”が、正しい道を進んでいくための海図として使いこなせるようにすることが大切です。

ベンチャー企業であっても、管理会計は経営判断に役立つ資料になるため、導入した方がいいでしょう。会社の未来のために、管理会計を有効活用してみてください。

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ABOUTこの記事をかいた人

証券会社、IT企業役員、ベンチャー企業などを経て2016年10月より独立。2017年7月株式会社Milkyways設立、代表取締役CEO。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻(WBS)修士課程卒。専攻はベンチャー企業論、ベンチャー経営論。趣味はダンスとラーメン。