GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)などのIT企業を中心に利用が進んでいるのが「OKR」と呼ばれている目標管理制度です。
日本ではメルカリやヤフージャパンが導入していることでも注目されています。
今回はGAFAなどが利用している目標管理制度「OKR」についてご紹介いたします。
目次
OKRとは
OKRは「Objectives and Key Results」の略称で、Objectives(目標)とKey Results(主要な成果)によって、高い目標を達成するための目標管理のフレームワークです。
高い目標を定めて取り組むことで、従業員のパフォーマンスを改善できることが数々の研究結果により明らかとなりました。
また、目標の難易度を上げて明確なゴールを設定した方が、達成に向けて従業員のモチベーションも向上すると言われています。
インテルの元CEOであるアンディ・グローブ氏は、「High Output Management 人を育て、成果を最大にするマネジメント」の中で、OKRのように目標を共有するシステムを効果的に構築するためには次の2 つの問いに答える必要がある、と述べています。
- 自分は何を目指したいのかがObjectives(目標)です。
- 目標までの到達度をどのように測ればよいかがKey Results(主要な成果)です。
Objectives
Objectives(目標)には、より大きくチャレンジングなテーマを設定します。
高いObjectivesを掲げることで、従業員の自律的な挑戦を促すことができ、組織全体の業務効率や生産性のアップが期待できます。
Objectivesは定性的なものであり、基本的に定量的な指標は以下のKey Resultsで入れることがおすすめです。
設定されるObjectivesは、原則として四半期に1つが望ましいと言われています。
OKRは組織の全員に公開して、誰もがお互いの作業状況を確認できるようにすることも重要です。
目標の60~70%の達成率が理想的と言われており、達成率が常に100%を超える場合には目標設定レベルが低いと言えるので、設定を見直してみましょう。
Key Results
数値化が難しい定性的な性質のObjectivesに対して、Key Results(主要な成果)は、状態を数値化できる定量的な性質を持ちます。
よって、一般的には1つの目標に対して、複数のKey Resultsが設定されます。
組織にとっても、従業員個人にとっても大きな目標を設定することから、目標に対して100%の成果を出す必要はありません。
完全なKey Resultsの達成を目的としないため、業績評価や人事評価においては目標に向かって取り組むプロセスを参考とします。
Key Resultsの達成度が、そのまま評価に影響しない点も大きな特徴といえるでしょう。
企業の目標を達成するためにそれぞれの役割を明らかにして、組織全体でコミュニケーションを活性化し、一致団結して取り組むことを目的としています。
組織と従業員個人の目標を連動させるため、組織・部署・チームの各目標に細分化した上で個人の目標設定を行います。
OKRとMBO、KPIの違いとは
OKRはMBOやKPIと近しい言葉として利用されていることも多いですが、どのように違うのかについて見ていきましょう。
・MBOは「Management By Objectives(目標による管理)」
・KPIは「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」
と日本語で訳されることが多いです。
MBO(目標管理制度)とOKRの違い
MBOとOKRの違いについて見ていきましょう。
レビューの頻度
一般的に、MBOを使用している企業は年に一度パフォーマンスの評価を行います。
一人ひとりの社員について一年間を通じた目標を設定し、年の最後に業績を分析・評価するのです。
一方、OKRはより高い頻度でのレビューを推奨しています。1ヵ月~四半期という短期間ごとに見直しを行うことで、パフォーマンスのこまめな軌道修正が可能となります。
測定(達成度の測り方)
MBOのスコアリングは柔軟で定量的、定性的、またはその両方の測定を用いるなど、組織によってさまざまです。
一方、OKRは「SMARTゴール(Specific=具体的に、Measurable=測定可能な、Achievable=達成可能な、Related=経営目標に関連した、Time-bound=時間制約がある)」という目標設定の手法です。
定量的なスコアリングを行うので、簡単かつより正確な判定が可能となります。
共有範囲
MBOの目標は各従業員と上司・人事担当者のみの間で共有されます。
一人ひとり個別に設定され、全体に開示されることはありません。これは、業績が直接に報酬に影響を及ぼすことも関係しています。
一方、OKRの目標は企業・チームの中で共有されます。一人ひとりのパフォーマンスは組織内で公開され、目標に合わせて調整されます。OKRの目標とは組織全体の目標であり、それを達成するためにチーム内で連携する必要があるのです。
目的
MBOは、一年ごとの業績に基づいて従業員の報酬を決定することを主な目的としています。このため、MBOは個々のパフォーマンスに焦点を当てた目標管理となります。
対するOKRの焦点は、企業が高い目標を達成するための可能性を広げることであり、個々の報酬には影響しません。OKRの整合性は、従業員全員が共有する目標の裏にある「なぜ、この目標なのか」という理由を理解するのに役立ちます。
目標達成の期待水準
MBOでは、目標を達成することが報酬と直接関係するため、目標に対して100%以上のパフォーマンスをこなすことが期待されます。逆に言えば、100%に満たなければ報酬が減る可能性もあるのです。
一方、OKRは平均的に60~70%の成果が期待されます。反対に、常に100%達成することができてしまうような目標は、野心的・現実的であることが理想とされるOKRにふさわしくないとみなされます。
KPI(主要業績評価指標)ととOKRの違い
KPIとOKRの違いについて見ていきましょう。
KPIはKey Performance Indicatorの略で、日本語に訳すと「重要業績評価指標」という意味になります。
KPIとは目標を達成する上で、その達成度合いを計測・監視するための定量的な指標のこと。
少し難しそうに聞こえますが、たとえば、営業部門でよく使われるKPIの一例に、
訪問件数
受注件数
などがあり、受注件数というKPIが達成できれば、おのずと売上高や売上件数といった個人や組織の目標を達成できます。
つまりKPIとは、個人や組織が日常業務を進める際、達成度合いを具体的な数値で測定すれば、現在、目標に対してどのくらい進捗しているのかが分かる指標のことなのです。
KPIは数値で指標化されるものであり、KGI(重要目標達成指標)の中間指標として、重要な役割を果たしています。
KPIは最終目標達成までのプロセスを定量的な目標でチェックし、達成度合いを測るための中間指標です。
100%の達成を目指し、現実的な目標設定を行います。
一方、OKRは組織が一丸となって目標達成させるためのものです。
そのため、高めの目標設定であることに意義があり、目標の60%〜70%が達成できるように設定します。
OKRの導入が増えている背景
GoogleやFacebookなど最大手のグローバル企業に加え、株式会社メルカリやヤフー株式会社など日本の大手企業もOKRを導入しています。なぜOKRはこれほど注目されているのでしょうか。
OKRの導入が進む背景として、従来の業績評価や人事評価制度の改革が求められていることが挙げられます。
業績・人事評価においては、客観的に公平に評価を行うことが重要です。しかし、これまでは上司による主観的な評価が主流でした。
一方で、さまざまな国籍や文化を持つ従業員が働くグローバル企業では、価値観に違いのある従業員が納得できる評価を下す必要があります。
OKRでは、定量的なKey Resultsによって客観的に従業員を評価することができるため、グローバルな社会で注目が集まっているといえるでしょう。
OKRを導入するメリットとは
OKRは企業にとっても従業員にとっても成長をもたらし、生産性の向上が期待できます。主なメリットとして以下が考えられます。
企業ビジョンの浸透
先述の通り、OKRは企業と個人の目標がリンクしているため、企業のビジョンが従業員にもわかりやすく、組織内により深く浸透していきます。
エンゲージメントの向上
組織内共有している目標に向かって行動し、組織内のコミュニケーションが活発になります。
それぞれの貢献度を可視化することにより企業への愛着心や貢献意欲が上がり、日々の業務に対してポジティブな気持ちになりやすいなど、ワークエンゲージメントや従業員エンゲージメントの向上につながります。
タスク優先事項の明確化
OKRは、全ての従業員が目標を共有しているため、「主要な成果」に直接的につながることや影響が大きいことは優先順位が高いことがわかりやすく、そうでないものは低いといったタスクの優先事項が明確化されて効率的な行動ができるようになります。
OKRを組織でうまく取り入れよう
OKRは、グローバル社会において、企業にとっても従業員にとっても魅力の大きい目標管理手法です。
高い目標を設定し、企業全体でチャレンジしていくことでパフォーマンや組織力のアップが期待できることから、国内外問わず注目を集めています。
公正・公平な人事評価の仕組みづくりは、人材確保はもちろん企業成長に欠かせません。
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