ボジョレー・ヌーボー に学ぶ マーケティング戦略 と 日本市場縮小 のわけ

ボジョレー・ヌーボー に学ぶ マーケティング戦略

毎年11月第3木曜日 に解禁される「 ボジョレー・ヌーボー 」。 日本では1985年頃から輸入が始まったようです。

今ではすっかり日本でも定着しており、 ボジョレー解禁 前後ではお店でも大々的に取り上げられていることも多く、1杯くらい飲まれる方も多いかもしれません。

ボジョレー・ヌーボーを マーケティング の視点で見ると、非常に戦略的でうまく展開しているなという印象を受けます。 しかし、ここ数年日本での市場は縮小傾向に。

そこで、 ボジョレー・ヌーボー に学ぶ マーケティング戦略 と 日本市場縮小 のわけについてご紹介させていただきます。

ボジョレー・ヌーボー とは

ボジョレー・ヌーボーを飲んだことがある方も多いと思いますが、なんとなくイベントっぽいから飲んでいるという方も多いのではないでしょうか。 僕もそのうちの一人でした。

ボジョレー・ヌーボーとは ボジョレーワイン (フランス語では Vignoble du Beaujolais と表記)の1種で、フランスの ブルゴーニュ地方南部 マコン と リヨン の間にある ボジョレー地方 で生産されていることが名前の由来です。ほとんどが法律で「 ガメイ種 」に限定されている赤ワインとなり、白ワインは全体のうち1%程度しかないようです。

ヌーボー とは新しいという意味で、その年の8月に収穫されたぶどうを使って作られる新しいワインです。

日本語で訳すと「 ボジョレー地方で作られたその年のぶどうで作った新しいワイン 」となるでしょうか。

元々は ワイン業者向け にその年のブドウの出来をチェックすることが主な目的でしたが、解禁日を毎年の新酒イベントとして盛り上げる マーケティング戦略 を取り入れることで、現地フランスをはじめとした 世界各国 でも一般消費者をターゲットとした販売が行われるようになりました。

解禁日 が設けられた理由としては各メーカーがどこよりも早く出荷して売上を稼ごうと競い合っていたものがだんだん エスカレート してしまい、中にはワインとして十分出来上がっていないにもかかわらず、出回るようになってしまうことを防ぐ狙いがあったためで、 1968年 に 解禁日 を設定。

つまり、イベントのために 解禁日 を設けていたわけではなく、規制の一種として始まったことが今となってはイベントのように取り扱われるきっかけとなったわけです。

ボジョレー・ヌーボー マーケティング戦略

ボジョレー・ヌーボー の マーケティング戦略 にはどのようなものがあるのでしょうか。大きく分けて以下3つご紹介いたします。

イベント化

飲食に関わるもので世界的に同時刻帯の 一斉解禁 というものはほとんど例がないのではないでしょうか。

期間外に販売できないという 機会損失 やイベント終了後の在庫リスクを抱えてしまうデメリットもありますが、多数あるワインの品種の中でこれだけ話題を作れているというメリットは非常に大きいでしょう。

特に日本人は お祭りごと が好きな民族性もあってか、ボジョレー・ヌーボーの消費が非常に多く、大成功と言えるでしょう。

他に 飲食関連 でイベント化させて成功しているものとしては、 バレンタインデー / ホワイトデー におけるお菓子や クリスマスケーキ などが挙げられます。

イベントと言えば最近 ハロウィン の盛り上がりが活況ですが、渋谷の人混みは年々すごいことになってますね。

ボジョレー・ヌーボー に学ぶ マーケティング戦略 イベント

ブルー・オーシャン戦略

ワインの価値を決める競争要因は一般的に、

・ 生産地
・ 生産者
・ ぶどう品種
・ 年代
・ 希少性
・ 味

といったものを元に評価され、需給バランスを踏まえて値段が決まっていきます。

ブルー・オーシャン戦略 の中に「 戦略キャンバス 」というものがあります。 戦略キャンバス とは「 競争要因 」と「 要因レベル 」を マトリクス化 して、自社と他社を比較するグラフみたいなもので表されます。

その中でもワインはウィスキーなどと同様に、古いものほど希少性が増すこともあり値段が高くなる傾向に。

ボジョレー・ヌーボーが今までのワインと違うのは、 熟成期間 で価値を出すワインの中で フレッシュ さを売りに出して 新しい価値 を訴求したことです。

フレッシュさ という従来のワインにおける 競争要因 とは違った 評価軸 を打ち出すことで他のワインと差別化を行い、競争のルールを変えたことで独自の市場を作り出すことに成功しました。

ボジョレー・ヌーボー 年代ごとの キャッチコピー

ボジョレー・ヌーボー に学ぶ マーケティング戦略 キャッチコピー

ボジョレー・ヌーボーには毎年どのような出来具合なのか、味なのかといった観点から「 キャッチコピー 」が付けられています。

今年はどんな味わいなのかを知る手がかりとしては良いのですが、過去の キャッチコピー を時系列で並べて見るとおもしろいことがわかります。

キャッチコピーには2種類あり、

・ 輸入業者や飲食店関連の「 販売業者 」が付けるもの
・ 「 ボジョレーワイン委員会 」 が付けるもの

となっております。

以下は積極的な キャッチコピー を付けることが多い 販売業者 が付けた キャッチコピー 一覧です。

年代 キャッチコピー ( 販売業者 )
2000 今世紀最後の新酒ワインは色鮮やか、甘みがある味
2001 ここ10年で最もいい出来栄え
2002 過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄えで1995年以来の出来
2003 110年ぶり の当たり年
2004 香りが強く中々の出来栄え
2005 タフな03年とはまた違い、本来の軽さを備え、これぞ『ザ・ヌーボー』
2006 今も語り継がれる76年や05年に近い出来
2007 柔らかく果実味豊かで上質な味わい
2008 豊かな果実味と程よい酸味が調和した味
2009 過去最高と言われた05年に匹敵する50年に一度の出来
2010 2009年と同等の出来
2011 100年に1度の出来とされた03年を超す21世紀最高の出来栄え
2012 偉大な繊細さと複雑な香りを持ち合わせ、心地よく、よく熟すことができて健全
2013 みずみずしさが感じられる素晴らしい品質
2014 太陽に恵まれ、グラスに注ぐとラズベリーのような香りがあふれる、果実味豊かな味わい
2015 過去にグレートヴィンテージと言われた2009年を思い起こさせます
2016 エレガントで酸味と果実味のバランスがとれた上品な味わい
2017 美しい凝縮感と豊かな香りを備えた秀逸な仕上がり

訳し方はサイトによって若干異なるものの、非常に アグレッシブ な キャッチコピー が並んでいることがわかるのではないでしょうか。

ぱっと見た比較でいうと、

1位 「2011年 : 100年に1度の出来とされた03年を超す21世紀最高の出来栄え」
2位 「2003年 : 110年ぶりの当たり年」
3位 「2005年 : タフな03年とはまた違い、本来の軽さを備え、これぞ『ザ・ヌーボー』」
  「2009年 : 過去最高と言われた05年に匹敵する50年に一度の出来」
  「2010年 : 2009年と同等の出来」

のような順番になりそうですが、「 何十年ぶり 」や「 過去最高 」のように過去のキャッチコピーを寄せ付けないものが続々と出てきますので、結局どれが良いかいまいちわかりません(笑)。

しかし、年に一度で過去の キャッチコピー まで覚えている人はそう多くはないと思いますので、尖った刺激的な キャッチコピー を楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。

ボジョレー・ヌーボー 日本市場縮小 のわけ

ボジョレー・ヌーボーは日本で非常に人気が高く、輸入量第1位で全生産量の約4分の1程度を占めているとされています。

2003年に店頭からボジョレー・ヌーボーの在庫がなくなってしまったことを受けて、その翌年2004年がピークとなったものの近年ではピーク時の半分程度になってしまったようです。

ボジョレー・ヌーボー 日本市場縮小のわけについては以下が考えられます。

1、飽きられた

毎年イベント化して定着したものの、ある程度定番化してしまったために珍しさが薄れて飽きられたのではないでしょうか。

今までが異様に売れていたことを考えるとこれが普通くらいなのかもしれません。

ここからテコ入れするためには、従来の マーケティング とは違った打ち出し方をする必要があります。

2、普段からワインを飲むことが増えて美味しくないと気付いた

普段からワインを飲む人が増えたことで、ワインの味がわかる人が増えたことも挙げられます。

年に一度とはいえ、同じくらいの値段を出すのであれば チリ や アルゼンチン産 のお手頃なワインの方が種類も多く、味も良いと感じている人も多いはず。

最近では少し高級な「 ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー 」など味にこだわる人向けの商品も出回っているようです。

日本 の ワイン市場 は 増加傾向

ボジョレー・ヌーボーの 輸入量減少 とは逆に、日本のワイン市場は増加傾向にあります。

赤ワインに含まれる「 ポリフェノール 」が健康に良いとブームとなったことを受けて、1998年がワインの 輸入量 が 数量 、 金額 ともに過去最大となっていますが、それに迫る勢いで近年 ワイン市場 は盛り上がりを見せています。

ボジョレー・ヌーボー に学ぶ マーケティング戦略 日本のワイン輸入量

引用 : 東京税関 ボトルワインの輸入

また、長らくワイン輸入量首位だった フランス を チリ が上回り始めました。金額ではまだまだフランスの半分にも満たないものの、イタリアを抜いて2位に。

2007年に日本とチリの間で「 日チリEPA 」を締結後、ワインに対する関税が徐々に減っていき 2019年4月 にはゼロになる予定ですので、さらに増えることも予想されます。

日本のワイン輸入ランキング ボジョレー・ヌーボー に学ぶ マーケティング戦略

引用 : 東京税関 ボトルワインの輸入

この結果を受けてEUも日本との EPA交渉 を行い、2019年にEU産ワインにかける関税を撤廃する方向で調整中とのこと。ボトルワイン1本あたり 約93円 ほど安くなるようです。

チリ産ワイン だけではなく、他の国のワインも 関税撤廃 のおかげで少し安く飲めるということは、消費者としては嬉しい限りでワイン輸入量の増加傾向は今後も続くのではないでしょうか。

逆張り戦略とイベント化は他の商品/サービスでも利用できる可能性あり

従来のワインにおける 競争要因 の 熟成 という項目を、 フレッシュさ に変えることで競争環境を変えることに成功したボジョレー・ヌーボー。

お祭りごとが好きな日本人にとってはうまくイベント化させるということと合わせて考えると、飲食関係に関わらず他の業界においても応用できるマーケティング戦略だと言えるでしょう。

競争要因を変えるだけであれば自社単独で行うことも可能ですが、イベント化まで行うには同業他社や場合によっては異業種とコラボするなどある程度の数の力も必要となります。

かかる労力は大きいものの、 イベント化 が成功すれば少なくとも数年間は リターン が見込めるためにやってみる価値はあるのではないでしょうか。