サブスクリプションビジネス の重要指標 チャーンレート の計算時における注意点とは

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サブスクリプションビジネス の重要指標 チャーンレート の計算時における注意点とは

BtoB、BtoC共にサブスクリプションビジネス、Saasビジネスが拡大の一途を辿る今日では、解約率を意味するチャーンレート(Churn Rate)という言葉を耳にする機会も増えました。

チャーンレートについては意識している方も多いと思いますが、計算方法によっては誤った方法で算出してしまう場合もあります。

今回は サブスクリプションビジネス の重要指標 チャーンレート の計算時における注意点についてご紹介いたします。

チャーンレート とは

チャーンレートとはサービスにおける解約率のことで、以下の計算方法で算出されます。

チャーンレート の計算方法

チャーンレート = 月間の合計解約ユーザー数  ÷ 月初のユーザー数

月初にいたユーザーの内、どれくらいが月末までに解約をしてしまったのかという指標です。

MRR(Monthly Recurring Revenue)について

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは、サブスクリプション型サービスやSaaSなどで使われる言葉で、毎月得られる収益のことを指します。

月次経常収益と呼ばれることもあります。

初期費用のような一時的な収益などは含めずに毎月の継続的な収益のみを合算することで、安定的に入ってくるであろう売上見込から事業計画が立てやすくなることからも利用されています。

せっかく新規顧客が増えていてもチャーンレートが高いとMRRが積み上がっていきません。

MRRとARRの違いについて解説

サブスクリプション型サービスやSaaSで使われるMRRとARRの違いについて解説

2021年8月14日

チャーンレートが重要な理由

なぜチャーンレートが重要かというと、サブスクリプションビジネスにおいてチャーンレートの%が毎月複利で効いてくるためです。

例えば、100人のユーザーがいるサービスで、新規契約が0の場合に毎月のチャーンレートが5%だったとすると(小数点は四捨五入で計算)、1ヶ月後にはユーザーは95人、2ヶ月後には90人、3ヶ月後には86人という具合にユーザーが減っていき、12ヶ月後には54人にまで減ってしまいます(下のグラフの青い線)。

さらに、チャーンレートが10%だとすると、なんと12ヶ月後のユーザー数は28人まで減ります(下のグラフの赤い線)。

チャーンレートが15%の場合はさらに悲劇的な数字となります(下のグラフの黄色い線)。

チャーンレートが重要な理由

単月だけですとさほど大きなインパクトには見えないのですが、中長期的に見ると5%のチャーンレートの違いがビジネスに非常に大きいインパクトをもたらすということがご理解いただけるのではないでしょうか。

チャーンレートをしっかりとトラッキングして改善をしていかないと、新規契約ばかりを重要視していても穴の空いたバケツにどんどん水を流し込んでいる状態になり、効率的なビジネスの成長は見込めません。

チャーンレート計算時の注意点

ただ、上記でご紹介をしたチャーンレートの計算方法は、扱いを気をつけないと間違った結論を導きかねません。

なぜ注意をしなくてはいはいけないのかを以下より見ていきましょう。

ユーザーの解約タイミングとチャーンレート

ユーザーが解約しやすいタイミングというのはビジネスによって様々だとは思いますが、利用開始初期に解約が起こりやすいというビジネスは少なくありません。

例えば、セルフサービス型のサブスクリプションや初月無料の場合などは使い始めることが簡単ですので、その分「使ってみたら期待していたものと違ったので解約しよう」ということが往々にして起こりえます。

定期販売のECでも「届いたものがイメージと違ったから来月はいらない」ということも考えられます。

この「利用開始初期に解約が起こりやすい」という傾向を前提とした時に、冒頭に提示した 「月間の合計解約ユーザー数 ÷ 月初のユーザー数」で求められるチャーンレートはどのように推移するかを見てみたいと思います。

まず仮定として、毎月100人のユーザーが利用開始をして、翌月は10%、翌々月以降は毎月5%ずつユーザーが解約していくとします。

つまり、N月に利用開始をしたユーザー群(コホートなどと言います)のユーザー数とチャーンレートが以下のように推移するという仮定です。

ユーザーの解約タイミングとチャーンレート

毎月解約が積み重なっていくので、ユーザー数は下記のように推移します(小数点以下四捨五入により、数字が若干ずれる部分はご了承下さい)。

毎月のユーザー数とチャーンレート

ここで再確認したいのは、新規ユーザーの初月チャーンレートが10%、翌月以降は毎月5%という各コホート内でのチャーンレートは全く改善していないということです。

しかし、このデータに「月間の合計解約ユーザー数 ÷ 月初のユーザー数」という数式をあてはめてチャーンレートを計算すると以下のようになります。

チャーンレートの数値における注意点

お気づきの通りかと思いますが、各コホート内でのチャーンレートの推移は全く改善していないにも関わらず、全体として見るとチャーンレートが徐々に下がっています。

何が起きてるのかというと、解約しにくい古くからのユーザーの割合が次第に増えていくため、全体としての解約率が下がって見えるのです。

新規ユーザー獲得数が減っている場合のチャーンレート

また、新規ユーザー獲得数が徐々に減っているようなケースを想定してみます。

ここでは新規ユーザー獲得が100人から95人、90人と毎月5人ずつ減っていくようなケースを想定します。するとチャーンレートは以下のようになります。

チャーンレートのずれ

数値を上の表と比較すると、チャーンレートの改善幅がさらに上がっているのがわかると思います。こちらも理由は基本的に上と同じです。

また、セールスフォース・ドットコムが長らく提供しているSFA、CRMのサービスやソリューションを元にした、経営における最新のカスタマー・エクスペリエンス(CX)のノウハウが詰まったCX3.0の考え方を提唱しています。

消費者の行動原理と経済的なロジックを重視するCX 3.0の提唱者のジョン・グッドマン氏が考えている「グッドマンの法則」も有名です。

グッドマンの法則とは、顧客のクレーム対応とカスタマーロイヤルティの関係性、さらにクチコミによるマーケティング効果を実証的に描いたもので、40年近く前にアメリカ 大手企業の数百社に対しグッドマンら調査チームが大規模な市場調査を実施して発見しました。

以下のリンクからセールスフォース・ドットコムのホワイトペーパーのダウンロードも出来ますので、ご関心がある方は一度ご参照いただいても良いと思います。

グッドマンの法則
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2021年4月30日

チャーンレートを正しく見るためにはコホート別の数値を見よう

チャーンレートを計算する際に「月間の合計解約ユーザー数 ÷ 月初のユーザー数」という数式をユーザー全体に当てはめてしまうと、実態を伴わない改善(や悪化)を示してしまうことがあります。

また、この計算方法では累計ユーザーの数や、ユーザー獲得のトレンドがチャーンレートに影響してしまいますので、チャーンレートを他社と比べたりするのも要注意です。

そもそも業界やサービス、対象顧客によってチャーンレートは大きく変わるため他社との比較には注意が必要と言えるでしょう。

これを回避する方法としては、導入月別のコホートに分解して各コホートの中での解約率(先程10%→5%→5%→5%と仮定していた部分)が改善しているかどうかを継続的にチェックしていく必要があります。

例えば、製品のリニューアル前に獲得したユーザーの毎月の解約率の推移が10%→5%→5%だったものが、製品のリニューアル以降は9%→4%→4%に改善しているとすれば、これは本当にビジネスが改善している可能性が高いです。

このように見ていくことで、実態としてビジネスが改善できているのかを把握することができますし、どの施策がチャーンレートの改善に効果があったのかということも把握しやすくなります。

最近ではサブスクリプションモデルのサービスを展開している企業でカスタマーサクセスの部署や担当者を置くことも増えてきておりますが、今回のような事例を含めて定量分析を行う際にちょっとしたポイントを押さえておくことで、より実態に伴うマーケティングリサーチに繋がります。

マーケティングに関するご質問やご相談などありましたら、ご連絡いただけますと幸いです。

本記事はNaoya Tamuraさんの以下の「チャーンレート(解約率)の計算で注意したいこと」の記事を元に、加筆した内容として寄稿掲載しております。

参考:note チャーンレート(解約率)の計算で注意したいこと

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ABOUTこの記事をかいた人

証券会社、IT企業役員、ベンチャー企業などを経て2016年10月より独立。2017年7月株式会社Milkyways設立、代表取締役CEO。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻(WBS)修士課程卒。専攻はベンチャー企業論、ベンチャー経営論。趣味はダンスとラーメン。