ベンチャー企業 や スタートアップ で働く方、または興味関心のある方であれば、 ストックオプション という言葉を目にする機会や耳にする機会も多いはずです。
ストックオプションと言えば、「IPOをして華やかな生活が待っている!」のようなイメージをお持ちの方もいるでしょうし、実際に目指している方も多いのではないでしょうか。
ベンチャー に関わる方であればもちろん、 ベンチャー企業 以外でもストックオプションの制度がある会社もありますので、今は自分に関係ないという方でも知識として正しく理解しておいても良いかもしれません。
今回はベンチャー で知っておくべき、 ストックオプション の メリット と デメリット について、わかりやすくなるように擬人化して紹介してみたいと思います。
目次
ストックオプション とは? ストックオプション の自己紹介
僕の名前は「 ストックオプション 」。あだ名として「SO」などと省略されることもありますよ。
何が出来るかというとストックオプションにも色々な種類があるけど、代表的なものとしては自社株をあらかじめ定められた安い価格で購入できる権利が使えるんだ。
例えば市場で1万円で取引されている自社の株を1,000円で購入できたら嬉しいよね。
また、金額と合わせて一緒に決められるのが、権利が使える株数だよ。
1万円で取引されている自社の株を1,000円で買う権利が100株で、権利を利用してすぐに売ってしまう場合にわかりやすく手数料や税金を除くと、
1万円 x 100株 ー 1,000円 x 100株 = 90万円 が利益として残るよね。
これが1万株だと、
1万円 x 1万株 ー 1,000円 x 1万株 = 9,000万円 が利益として残るから、金額以上に株数が重要とも言えそうだね。
生まれたのは米国で、1950年代の税制改正によって従業員に税務上のメリットが大きくなったことから広まったとも言われており、1970年代以降になるとイギリスやドイツなどにも広まっていったんだ。
日本では1997年(平成9年)の商法改正によって、徐々に広がりはじめたよ。
最初は既に本国で取り入れられていることから、外資系企業の日本法人などを中心として「 新株予約権割当契約 」の導入が相次ぎました。
その後2001年(平成13年)の商法改正により、ストックオプション制度は自社の社員だけではなく、関連会社従業員や取引先などにも付与可能となり、実質誰でも利用できるようになっていったんだ。
ストックオプションの税務上のメリットを受ける上で代表的な点としては、ストックオプションの付与がされて2年から10年を経過する日までの間に行わなければならない(租特法第29条の2第1項1号)、権利行使金額の年間合計額が1,200万円以下(租特法第29条の2第2項)なので注意しておこう。
ストックオプション の メリット
ではなぜ僕がここまで人気になっているのかを紹介しよう。 ストックオプション の メリット について見ていくよ。
ストックオプション を付与された社員のモチベーションアップ
ストックオプションを付与された社員はIPOで株式公開した際や既に上場している場合、株価がストックオプションで購入できる金額よりも上昇していれば、権利行使金額との差額分を利益として受け取ることができるよね。
株価が上がれば上がるほど利益が大きくなるので、もちろん株価を上げる為だけではないけど頑張って働き、結果としてお客様や株主にとってもハッピーになる、というのがストックオプションの仕組みであり、モチベーションの一つとなると言えそうだね。
優秀な人材の確保、流出の防止がある程度できる
ストックオプションを導入している企業は導入していない企業に比べると、その時点での給与以外にも魅力的なインセンティブとして、優秀な人材を集めるのに一役買うことに期待が出来そうだね。
特にIPOを目指している企業の場合、優秀な人材を採用したいというニーズがあるものの、まだそこまで利益が出ていないため実力に見合った報酬を提示するのが難しいことが多いんじゃないかな。
また、少し仕事が辛い時でも「もう少ししたら ストックオプション が使えそうだから頑張ろう!」と退職の防止に一定の効果もありそうだね。
付与された側が損をすることがない
ストックオプションはあくまでも権利だから、予め決められている金額よりも実際の株価が低ければ利用しなくても良いんだ。
その場合には残念ながら利益を取ることはできないけど、権利を利用しなければ損をすることにはならないよね。
キャッシュがない時でも権利付与ができる
ストックオプションであれば実際にお金を支払うわけではないので、キャッシュアウトをしないというのも大きなメリットだよね。
付与される側も株をその時点で買うわけではないので、入社したての若手社員の方でもストックオプションの付与を受けられそうだね。
ストックオプション の デメリット
ストックオプションのメリットを見ていったけど、なかなか良さそうなことが多いってのがわかってもらえたんじゃないかな。
でもやっぱりどんなことでも良いことばかりってわけにはいかないんだよね。次は ストックオプション の デメリット についてもしっかりと把握しておこう。
ストックオプション はあくまでも権利で行使できないことも多い
一番のデメリットはストックオプションというのはあくまでも権利であって、実際に行使できないことも多いってことなんじゃないかな。
未上場企業の場合にはIPOしないと利用できないし、途中で他の企業に買収された場合にはストックオプションが消滅してしまうことも珍しくないんだ。
もちろん一生懸命働いていてもIPOする前に途中で辞めてしまったら利用することも出来ないんだよね。
既に上場している企業の場合には、業績に応じたストックオプションが発行される契約がプロ経営者などを中心に利用されていて、業績にもよるけどIPOよりは行使できる可能性が高いかもしれないね。
そう考えると僕のことを制度として取り入れている企業は多いけど、利用されずに幻になってしまっている企業の方が多いと言えるかもしれないね。
ストックオプション が縁の切れ目に
お金の切れ目が縁の切れ目って言葉があるけど、残念ながらストックオプションが縁の切れ目になってしまうこともあるんだ。
ストックオプション が縁の切れ目になる大きな原因としては、
1、ストックオプションの行使が見込めなくなった場合
業績が思ったよりも伸び悩んでしまいIPOが絶望的になった場合や、合わせて多いのが上場審査に満たないことに加えて市場環境が悪いためにIPOが延期してストックオプションの行使がすぐに見込めなくなった場合があるよ。
2、ストックオプションを行使してしまった場合
ストックオプションの利益の額にもよるけど、ある程度まとまったお金が手元に入ったら会社を辞めてしまう人も中には一定数いるんだ。
もちろん元々別にやりたいことがあって、ストックオプションを利用したら辞めると公言している場合もあるので、その際にはお互いに今まで頑張ったことを認め合って別の道を応援し合うってことも良いかもしれないね。
ストックオプション の配分に気をつけておく
ストックオプションは入社時や資金調達を行う際に付与することが多いんだけど、配分に気をつけておくことも重要なんだ。
ストックオプションの金額や株数は社員同士でも細かく知らない場合もあるけど、ある程度公平に配分しておかないと後から不公平感に繋がってしまってモチベーションが低下してしまうこともありそうだね。
ストックオプション が希薄化してしまうことがある
ストックオプション の付与時期にもよるんだけど、その後に外部から資金調達をした場合にはストックオプションが希薄化してしまうことがあるんだ。
例えば100株しかない時期に5株をストックオプションでもらっていると全体の5%程度を買う権利があるよね。
その後に資金調達を行って10,000株に増やしたら一気に0.05%程度にしかならなくなってしまうんだ。
権利行使できる株数が変わらないので「そんなに変わらないのでは?」と思うかもしれないけど、株数が増えると1株あたりの株価が下がることにつながるので利益額が減ってしまいかねないね。
ただ、資金調達を行えるってことは一般的には企業の魅力が上がって時価総額が大きくなっていることが多いので、株価も高まる方向には向かってるってことだから悪い事ばかりではないかもしれない。
ストックオプションはどれくらい付与できる
ストックオプションの希薄化について話が出たところで、そもそもストックオプションはどれくらい付与できるのかを知っておこう。
ストックオプションの付与については会社によって発行している株数が多かったり少なかったりするので株数で見るのではなく、発行している株数に対する比率で見ておこう。
明確にストックオプションの比率がルールとして決まっているわけではないんだけど、ストックオプションは発行済み株数に対して10%程度にすることが多いみたいだね。
なぜかというと、ストックオプションが実際に使われると、今までは潜在的(市場に出回っていなかった)だった株が発行されることになるから、株の価値が希薄化して既存株主が不利益を被ってしまう可能性が高いからなんだ。
ある会社の株を買おうかなと思っても、もしストックオプションが50%もあれば将来的に株の価値が大きく下がるかもしれないので、なかなか買うのが難しくなっちゃうんじゃないかな。
ストックオプションの発行比率が10%を大きく超えていると、上場時の審査で引っかかってしまう可能性もあるので予め確認しておいた方が良さそうだね。
ストックオプション にまつわる話
実際にストックオプションで起こった有名な話をいくつか見てみよう。
日本で一番有名なのは数十億円のストックオプションを利用しなかった話じゃないかな。
当時ゴールドマン・サックスが未上場の時期に働いていたのが史上最年少の30歳ゼネラル・パートナーになった松本大さん。
ゴールドマン・サックスがあと少しで上場して、数十億円と言われるストックオプション利益が手に入るというときに、松本さんはゴールドマン・サックスを辞めてしまったんだ。
そのタイミングでマネックス証券というネット証券会社を設立して、今でもマネックスグループCEOとして働いているよ。
目の前の大きなお金を捨ててでも自分のやりたかったことをやって成功したのは、松本さんの実力があってこそだけどすごいことだよね。
また、最近だとメルカリが上場したのに合わせて35名が6億円以上の資産を手にしたのではないかとも言われてるみたいだね。
参考 : NEWS PICKS 35名が6億円以上の資産、メルカリが証明したスタートアップドリーム
海外ではスターバックス・コーヒー社が「ビーンズストック」と呼ばれているストックオプション制度を導入しているようだね。勤続期間や労働時間などの条件を満たしていれば、パートの従業員でもストックオプション対象者としているよ。
ストックオプション と 持株制度 の 違い とは
ストックオプションと比較される持株制度というのがあるけど知っているかな。
持株制度は会社によってある場合とない場合があり、任意で自社の持株会に入ることができる制度なんだ。
厚生労働省によると、労働者の資産形成に関する援助制度について種類別に企業割合(複数回答で有効回答数4,271)をみると、「持株援助制度」9.5%、労働者に対する「ストックオプション制度」1.5%と持株制度を導入している企業の方が多いことがわかるね。
ストックオプションとの違いは、持株は権利ではなく実際の株を買うことになるので、会社を辞める時に買い取ってもらうこともできることが多いようだね。
中には自社株購入時の奨励金といって、社員が購入する持株金の金額に対して会社がプラスして株の購入金額にあてててくれる場合もあるよ。
一般的には奨励金の目安が5%〜20%くらいと言われている中で、有名な例ではIT企業のサイボウズでは奨励金を100%としているみたい。
例えば毎月自社株を1万円分購入すると、さらに会社が毎月1万円分を購入負担してくれるので結構大きいインセンティブになるんじゃないかな。
過去にはリクルートやサントリーといった社歴の長い企業が上場をした際に、持株会に入っていて大きなリターンに繋がったと言う例もあるみたいだね。
ストックオプションを上手く使うと同時にデメリットも認識しておこう
ストックオプションを上手く使うことができれば、発行する企業にとっても働く従業員にとってもメリットがある制度です。
一方でストックオプションばかりを売りにしている企業やストックオプションを目当てに働くと、権利行使できないことがわかったタイミングでお互いに不幸になってしまう可能性もあるかもしれません。
ストックオプション自体はあくまでもインセンティブの一つとして捉えて、その他にも働きがいといった本質的な部分を見ていくことが重要でしょう。
ご紹介したストックオプションの内容はごく一部ですので、細かい税制などを知りたい方は他のサイトや本なども合わせて参照することをおすすめいたします。
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