中小企業の経営者やフリーランス、個人自業主などの自営業の方は賃貸物件探しをして気に入った物件が見つかっても、審査が通りにくいと言われており必ず入居できるとは限りません。
賃貸契約を結ぶ前には「入居審査」が行われ、審査を通った場合にはじめて契約ができます。
賃貸物件の入居審査では、どういったことがチェックされているのでしょうか。
今回は私の経験を踏まえて賃貸の審査を通す方法と技術についてご紹介いたします。
目次
中小企業の経営者や個人事業主・自営業は賃貸の審査が落ちやすい?
個人事業主や自営業で働いている人でも、もちろん賃貸の入居審査は通ります。
一方で公務員や社員の方よりも収入が不安定と見做されるため、審査上不利になることもあって賃貸の審査が落ちやすいと聞いたこともあるのでは無いでしょうか。
これは家だけではなく信用力を見られるクレジットカードの審査でも同様のことが言えます。
小さい会社で自営業をしている私の経験から言うと、残念ながら中小企業の経営者や個人事業主・自営業は賃貸の審査は間違いなく落ちやすいです。
実際に私も気に入った物件がありましたが、審査落ちしてしまって悔しい思いをしたことが何度もあります。
家賃が月に10万円前後くらいの物件であればさほど影響がないかもしれませんが、高級物件に住もうと思った際には一気に審査が厳しくなりやすいです。
ただ、自営業の方でも気に入った物件を諦めるのは早いです。
自営業の方が賃貸の審査で見られているポイントとは
自営業の方が賃貸の審査で見られているポイントとはどのようなものがあるのでしょうか。
会社員や公務員の方と比べて異なるポイントについて見ていきましょう。
収入が安定しているかどうか
賃貸の審査で見られている一番のポイントは収入が安定していて継続的に家賃を支払い続けることが可能かどうかということです。
賃貸の場合には家賃にもよりますが、一時的な所得や預金額の有無よりもキャッシュフローが安定的に回っていて家賃の支払い能力があるのかを審査ポイントとして重要視されます。
この点で自営業の方は大企業の社員や公務員と比べて安定性に欠けると見做されることが多く、審査で落ちやすい一番の理由として挙げられるでしょう。
自営業者やフリーランスの方が収入の安定性を示すためにはある程度の実績が求められるため、特に起業したばかりの会社や独立したばかりの個人事業主の場合は、実績と信用性がまだ少ないため審査に落ちやすいです。
最近では大企業でも業績が悪くなって人員整理をしている企業も少なくありませんし、フリーランスの方も増えている状況ではありますが、やはりマイナス面として取られてしまうのは避けられないと言えます。
もちろん、自営業者だからといって賃貸借契約を結ばないというわけではありませんし、自営業者の方の中には一般的な会社員の方よりも努力して多くの収入を得ている方も多いと思います。
よく言われているのが申し込みをした物件の家賃が収入の3割程度であるかが目安の一つと言われています。
例えば月の収入が30万円程度の方であれば10万円前後の物件、月の収入が100万円程度の方であれば30万円前後の物件という計算です。
どのようなお仕事をしているか
経営者や自営業の方と言っても企業の規模や業種など様々です。
一般的には小さい企業よりも大きい企業の方が信用度が高いでしょうし、社歴の長い会社の方が信用力が高まりやすい傾向にあるでしょう。
比較的景気に左右されやすい業種よりも安定的な業種の方が好まれる可能性も考えられます。
大企業以外の会社の場合にはどのような仕事をしているのか知られていないケースがほとんどですので、自社のHPを持っておくこととどのような事業を行っているのかをわかりやすく記載しておくようにしましょう。
事業内容が分かりにくいと賃貸だけではなく銀行の法人口座やクレジットカードの審査にも落ちてしまう可能性が出てきてしまいます。
居住用物件で事業を行わないかどうか
賃貸物件には大きく分けて居住用、SOHO可能、事務所可能の3つの種類があります。
多くの物件は居住用として賃貸をしている場合が多く、原則仕事の事務所での利用が禁止されています。
なぜ居住用物件で事業を行わないかが審査ポイントになるかと言うと、
- 従業員や取引先など多数の出入りがある可能性がある
- 人数が増えると騒いだりして近隣住民からクレームの可能性がある
- SOHO可能、事務所可能物件は敷金を高めに積む場合が多いのに払われない
といったことが挙げられます。
特に分譲賃貸のような比較的高級な物件では近隣住民の方が嫌がることも多く管理会社が厳しくチェックを行う傾向にあります。
入居審査に必要な書類について
入居審査に進む際には申込書とともに管理会社、不動産会社に必要書類を提出します。
代表的な書類とポイントについて見ていきましょう。
申込書類
入居申込書の記入事項は入居者の氏名や年齢、住所、生年月日、電話番号、勤務先の名称と住所、電話番号、勤続年数、年収といったものになります。
また、他に入居者がいる場合には同じく氏名や年齢、勤務先や学校名などの記入が必要です。
確定申告書・収入証明書
収入が証明できる書類として確定申告書や収入証明書が必要となります。
書類は以下の場所で入手が可能です。コンビニで取得の場合には顔写真付きのマイナンバーが必要ような場合もありますので事前に確認しておきましょう。
- 確定申告書の控え:税務署
- 所得税納税証明書:税務署
- 住民税課税証明書:区役所、市役所、コンビニ
- 納税証明書:区役所、市役所、コンビニ
場合によっては1期分だけではなく、2期分必要なこともあります。
決算書
フリーランスや個人事業主の場合には法人の決算書類は不要ですが、法人の代表の場合には決算書が必要なこともあります。
また、法人名義で借りる場合には決算書(法人の確定申告)
本人確認書類
本人確認書類は運転免許証や保険証、マイナンバーカードのコピーやデータとなります。
面面だけではなく裏面のコピーも提出が必要となる場合もありますので確認しておきしましょう。
保険証が会社の保険証ではなく、国民健康保険証の場合には審査上マイナスになりやすいと言われています。
この理由としては社会保険に入ってないためで、社会保険に入っている企業で働いていることや代表者であることは国民健康保険よりも審査にプラスに働くことが多いようです。
もし会社の代表者の方が国民健康保険の場合、引越しの審査を控えている際には社会保険に加入することも検討した方が良いかもしれません。
連帯保証人の書類
ある程度の金額の物件の場合、連帯保証人が必要となることがほとんどです。
会社の代表者の場合で法人名義として賃貸契約をしようとすると代表者の方が個人名義で連帯保証人にならなくてはいけません。
連帯保証人を探す手間は省けますが、小さい会社の場合には法人の業績が悪くなった場合、個人の給料にも影響が出る可能性があるため信用力が低く見られがちとなります。
賃貸の審査を通す方法と技術
中小企業経営者、自営業は賃貸の審査が落ちやすいと言われておりますが、ここからは実際に賃貸の審査を通す方法と技術について見ていきましょう。
ご紹介するものはあくまで私自身が感じたものや経験したものを中心としているため、あくまでも一意見として参考としていただけたらと思います。
不動産会社の選定
まず最初に気を付けておくべきポイントの一つとしては不動産会社の選定です。
賃貸の場合は物件の取り扱いに関して特定の会社しか扱っていない場合もありますが、同じ物件を複数の不動産会社が共有していることも多いです。
例えば気に入った物件を調べてみるとSUUMOやHOMESのような賃貸サイトで同じ物件で色々な不動産会社が取り扱っていることを見たことがある方もいるのではないでしょうか。
不動産会社の選定において気にする代表的なポイントは以下になります。
仲介手数料
不動産会社によっては同じ物件でも手数料が異なることが見受けられます。
A社では仲介料が家賃の1ヶ月分に対してB社では仲介料が無料といったこともあります。
B社が無料の理由としては借り手からではなく、成約した場合に貸主から手数料をもらうためです。
当然借り手としては仲介料が無料のB社を選定したくなるのではないでしょうか。
基本的には仲介手数料が安い方が良いことを踏まえて続いてのポイントを見ていきましょう。
担当者
私の経験では不動産会社の担当者によって賃貸の審査に大きな影響が出ることがあると考えております。
上記で見たように仲介料が無料の会社やお手頃な会社の方がコストメリットが大きいですが、手数料が高くてもしっかりとした担当者にお願いした方が結果としてお得になる場合もあります。
周りの話を聞いたところも含めてになりますが、賃貸物件の仲介の場合はチームではなく個人で案件の担当をしていることが多いため、担当者のやる気や能力によってかなりムラがあると言えそうです。
親身になって相談してくれたり貸主さんに交渉をしてくれる場合もあれば、申込書類をすぐに送ってくれなかったために先に申込が入ってしまうことも少なくありません。
中には申込書類を貸主に送っていないこともあるようです。
企業の規模や仲介手数料が高いからといって担当者の質が上がるとは限りませんので、自分が信頼できそうだなと思う担当者を見つけることは非常に重要なポイントと言えるでしょう。
レスポンスの速さや仮に審査に落ちたとしても理由をある程度伝えてくれたりアドバイスをくれるかどうかなどが参考になると思います。
出来れば1社だけではなく、何社か話を聞いてみて同時に進めるのが比較参考にもなりますしおすすめです。
連帯保証人と保証会社について
ある程度の金額の物件の場合には連帯保証人や保証会社を求められることがほとんどです。
連帯保証人と保証会社の両方を求められることも少なくありません。
私も契約書類の提出のためには連帯保証人と保証会社の両方が必要でした。
法人名義で借りる場合には連帯保証人は会社の代表者である自分がなる以外ありません。
また、個人名義で借りる場合には別で連帯保証人が必要となりますが、出来れば同じく自営業者の方は避けてある程度安定してそうな方にお願いするのが望ましいと思います。
さらに収入もそれなりにあると審査上プラスに働きやすいでしょう。
保証会社については会社によって独自の審査基準を設けていることが多く、審査が厳しい会社と比較的柔軟な会社があります。
私が聞いた中ですとSBIが厳しく、オリコやエポスなど信販系カード会社の系列である保証会社は比較的柔軟であるようです。
物件によって保証会社が決まっている場合も多いですが、複数社から選択できる場合もありますので、仲介会社の方に聞いてどこの会社が良さそうか教えてもらうと良いと思います。
書類について
賃貸の審査を通すにあたって提出する書類は非常に重要でおそらく一番のポイントとなるでしょう。
物件によっては法人の確定申告書類(決算書)、個人の確定申告書など複数年分の提出が求められる場合があります。
中小企業の経営者の多くはなるべく税金を支払わないために決算を赤字にしていたり、節税して黒字額を少なくしていることも多いと思います。
ここで気を付けておきたいのが今住んでいる物件よりも高めの物件の場合には、今の決算や確定申告に高くなった差分を引くこととなるためトントンくらいにしていた場合には赤字決算になると見られてしまう可能性があることです。
引越しを考えていて今よりも高めの物件に住むことを考えている場合には無理に節税をしすぎないで、多少ゆとりを持った黒字額や収入にしておいた方が審査上プラスになることは間違いありません。
また、私の場合は「中小企業倒産防止共済制度」という独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営をしている通称「経営セーフティ共済」に入っています。
他にも節税対策として保険に入っていることもいると思いますが、仕訳で注意しておきたい点として損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)に保険で利益を少なくしていることをわかるようにしておくことです。
仕訳の方法としては保険積立金を固定資産として入れておくことで節税対象であることがわかります。
実は私がこの方法を知らなくて節税のために行った保険を簿外資産として処理していた年があり、結果として実態よりも決算書類の見栄えが良くなくなってしまったという経験があります。
税理士さんの中には教えてくれる方もいると思いますが、どちらの方法でも経理として間違いではありませんので資産計上しておいた方が賃貸の審査にもプラスとなると思いますので注意しておきましょう。
ネット情報について
提出書類の中に会社名やURL、氏名を記載すると保証会社や貸主が調査を行います。
調査に関してまずは提出書類のチェックを行うと同時に、ネットでの調査も行われる場合が多いです。
会社がどのような事業を行っているのか、従業員の数や社歴などは必ず見るポイントになるのでサイトの方もわかりやすくしておきましょう。
パッと見た感じ何をしているのかわかりにくいHPの場合、審査にマイナスとなる可能性が高くなるので変更しておくことをおすすめ致します。
また、個人名で調べた場合に悪い噂や口コミがある場合にもマイナスとなるため、念のため事前に調べておいた方が良いと思います。
SNSでふざけた投稿などをしている場合には削除するか知り合い以外は見れなくするなどの準備をしておきましょう。
見た目や服装について
見た目や服装については直接貸主と会って面談するようなことはあまりないと思いますので特段気にしなくても大丈夫だと思います。
ただ、仲介会社の方に失礼な態度や清潔感のないような格好は一般的に好まれませんので注意しておきましょう。
気に入った物件の審査に落ちた際に考えたいこと
入居審査の基準は貸主や保証会社によって異なります。
審査に通らなかった理由は伝えられないことが多く、何が問題点かわからないことも少なくありません。
気になった物件で残念ながら審査に通らなくても、同じくらいの条件の物件では難なく審査に通ることもあります。
なお、審査に一度落ちてしまった場合には同じ貸主の物件の申し込みができない場合がありますので注意しておきましょう。
例えば三菱地所のA物件に落ちてしまったので似た条件であるB物件を申し込みしようと思っても、一度審査落ちしているので申込を受けてくれないといったことになります。
物件の審査に落ちた際に考えておきたいポイントについて見ていきましょう。
条件を変えてみる
気になった物件に落ちてしまった場合には条件を変えてみた方が良い場合が多いです。
収入に対して家賃の金額が高いと同様に審査が通らない可能性が高いため、同じくらいの金額帯で審査に通らない場合には条件を少し落とすなど変更してみるのも良いと思います。
どうしても譲れない条件がある場合には優先して、他の条件を見直してみましょう。
書類を再度見直してみる
提出書類の中で変更ができる箇所がないのか、審査にとってプラスになる要素はないかを見直すことは重要です。
決算書類や確定申告書類は年に1回しか更新ができないためすぐには難しいかもしれませんが、連帯保証人を変えてみたりHPの更新を行うといったことも有効な手段になります。
仲介会社、保証会社を変えてみる
なかなか審査が通らない場合、基本的には自社や自分のスコアリング・収入面で審査で落ちていることが多いですが、思い切って仲介会社を変えてみるのも一つの手段だと思います。
上述のように会社はもちろん担当者によってもかなり違いがありますので相性の良い担当者を探すことも検討してみてはいかがでしょうか。
別の会社や担当者に変えることで違う物件の提案をしてくれる場合もありますし、中には取り扱いが限定されている物件を持っていることもあります。
時期を変えてみる
引越しの時期にリミットがなければ時期を変えてみるのも良いと思います。
2〜4月あたりは引越しの繁忙期になるため仲介会社も忙しく、貸主も強気の条件のことも考えられます。
繁忙期を過ぎても空きのある物件であれば条件交渉の可能性もありますし、空き物件のままにしておくよりは審査を多少緩めても入居させようと思うかもしれません。
また、時期をずらすことで決算書類や確定申告の更新もできますので、前回よりも条件が良くなりそうであれば少し待って最新の状態で提出する方が良いでしょう。
気に入った物件があれば審査の前に出来ることは行っておきましょう
賃貸物件の入居審査では家賃の支払い能力と信用力が重視されますので、気に入った物件があれば審査の前に出来ることは行っておきましょう。
それでも審査に落ちてしまった場合には残念ですが他の物件を探してみることも重要です。
貸主によっては独自の審査基準をしていることもありますので、審査に落ちてしまった物件よりも高い金額の審査が通ることもありました。
諦めずに審査が通る可能性を少しでも高める努力をしておきましょう。
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