CSという単語を聞いてどのようなことを思い浮かべるでしょうか?
CSと言えばかつては「 カスタマーサポート 」を指すことが多かったですが、最近ではIT企業を中心に「 カスタマーサクセス 」を指すことも増えてきました。
カスタマーサポート も カスタマーサクセス も顧客向けの対応を行うという意味では概念が似ている部分があるように感じますが一体何が違うのでしょうか。
今回はカスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いについて注目しながら、カスタマーサクセスとはどのようなことを言うのかご紹介いたします。
目次
カスタマーサクセス とは
カスタマーサクセスの第一人者は、「カスタマーサクセス」という本の著者、ニック・メータ氏と呼ばれています。
カスタマーサクセスとは主に月額課金制であるサブスクリプション型のビジネスにおいて、顧客を成功に導くことにより顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)を最大化することを言います。
メータ氏によると、カスタマーサクセスに求められることは以下のとおりです。
- 顧客が商品やサービスを利用する上で感じる疑問点や問題に対して、顧客より先回りして課題解決や情報などを提供して成功へと導く
- BtoBの場合、顧客が自社製品、自社サービスを使って業務を拡大していけるように導く
- 結果として解約率(チャーンレート)の低下とLTVの最大化を目指す
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートにはどのような違いがあるのか見ていきましょう。
カスタマーサポートの特徴について
既に多くの企業で顧客の不満や問題に対応するカスタマーサポート部門が導入されていると思います。
カスタマーサポートは、顧客が抱えている不満を解決したり、問題を解消することを目的としており、その成果は対応件数や問い合わせを行った顧客の満足度などの指標で計測されます。
例えばメーカーなどにはカスタマーサポートセンターといった部署があり、ここでは顧客からの問い合わせや苦情への対応を行っています。
カスタマーサポートの担当者は、顧客から製品の使い方や不明点を聞かれたらわかりやすく教えます。
もし顧客がトラブルを抱えていたら解決方法を示し、顧客がそのトラブルに怒っていたら対応をすることも重要な業務としてあげられるでしょう。
基本的にはカスタマーサポートの担当者が動き始めるのは顧客からのアクションがあった後ですので、顧客に対して「守り」の部門と呼ばれることが多いです。
カスタマーサポート部門の成果やKPIは顧客対応件数や問い合わせを行った顧客の満足度などの指標で計測されることが多いです。
カスタマーサクセスの特徴について
カスタマーサクセスは顧客に成功体験をしてもらうことを目的としており、その成果はLTV向上や解約率低下などの指標で計測されます。
カスタマーサクセスは企業の売上を向上させるために顧客に対して能動的なアプローチをする点がカスタマーサポートと異なります。
カスタマーサクセスは、「顧客に不満足を感じさせたりトラブルを発生させたりしないようにしよう」と考えて行動します。そのため、カスタマーサクセスは顧客に対して「攻め」の部門と呼ばれることが多いです。
もちろん先回りして顧客に対して行動するにはコストがかかりますが、カスタマーサクセス活動によって不満足が減れば、問い合わせや苦情が減るのでカスタマーサポートの業務が減りその分コストを抑えることにつながります。
さらにLTV向上や解約率低下によって、カスタマーサクセス部門として利益を生み出すことも可能となります。
カスタマーサクセスは企業の売上を向上させるために顧客に対して能動的なアプローチをする点がカスタマーサポートと異なると言われることが多いのはこのためです。
しかし、カスタマーサクセスは「新しくてよりよいもの」、カスタマーサポートは「古い概念」という理解は正しくありません。
カスタマーサクセスの考え方が広がりつつある中でも、役割が異なるカスタマーサポートについて力を入れなくすることは得策ではないと言えます。
メータ氏は、カスタマーサクセスを機能させるにはテクノロジー以外に、自社製品・サービスを使っている顧客のモニタリングが必要であると述べています。
ITの進化と人々がネットサービスを多用するようになったことで、企業は大量の顧客データを容易に収集できるようになりました。
顧客をよく観察すること、どのように自社製品やサービスを使っている顧客が業績に繋がっているのかを日々分析してコミュニケーションを取っていくこともカスタマーサクセスには求められます。
カスタマーサクセスが重要視されている背景とは
近年ではシェアリングエコノミーの拡大により、消費者のニーズが「所有」から「利用」へシフトしていると言われています。
例えばBtoCではNetFlixやAmazon Prime Videoのような動画サービスを始め、車や洋服などのサービスもあり、BtoBでは会計ソフトやAdobe製品などクラウドで提供しているサービスが増えてきているのはご存知でしょう。
特にネット上で提供されるサービスの多くが月額課金の方式を取り入れています。
商品を売ることがゴールの「売り切り型商品」の場合、顧客に商品の魅力を伝えるための提案力や、商談を成立させるための営業力が重要となります。
一方、サブスクリプション型のビジネスにおいて、商談の成立はゴールではなく、顧客との継続的な関係の始まりです。
サブスクリプションの場合には契約が成立しても、顧客が商品やサービスに満足してくれなければ途中で解約される可能性が高いでしょう。
収益を上げ続けるためには、顧客と協創しながら成功体験のプランニングをして、製品やサービスを使い続けてもらうことが重要と言えます。
LTVの向上
自社の商品やサービスを利用した顧客に成功体験をしてもらうことにより、長期間にわたって契約関係を継続したり、顧客単価を上げることが可能になります。
これにより顧客生涯価値、すなわち取引が開始されてから終了するまでの期間(顧客ライフサイクル)内に企業にもたらされる売上や利益を向上させることができるのです。
また、満足度やロイヤリティを向上させることによって、競合他社の商品やサービスとの差別化を図ることも可能になります。
サブスクリプション型モデルの場合には契約をしてもらうだけでなく、「いかに使ってもらえるか」、「いかに解約されないか」も非常に重要となるのです。
カスタマーサクセスが向いている業種とは
カスタマーサクセスは元々IT業界で使われ始めました。近年では売り切り型ビジネスだけではなく、「1か月いくら」という定額制でサービスやツールを使用できる「サブスクリプション型」のビジネスがBtoB、BtoCを問わず多く出てきています。
商品を売ることがゴールの「売り切り型商品」の場合、顧客に商品の魅力を伝えるための提案力や、商談を成立させるための営業力が重要となります。
一方、サブスクリプション型のビジネスにおいて、商談の成立はゴールではなく、継続的な契約関係のスタートと言えます。
せっかく契約が成立しても、顧客が商品やサービスに満足してくれなければ解約される可能性が高いでしょう。
収益を上げ続けるためには、顧客と共に成長しながら成功体験のプランニングと提案をして、製品やサービスを使い続けてもらうことがお互いのために重要です。
一般的には売り切り型よりもサブスクリプション型の方が初期費用や月額費用が安い分、ある程度長い期間使ってもらわないと製品コストやマーケティングコストを上回るのが難しいと言えます。
そこでカスタマーサクセスの考え方が生まれました。顧客に長期間使ってもらい費用を支払ってもらうには、不満を抱かせては解約や乗り換えに繋がってしまいます。
従来のカスタマーサポートのように「不満が出てから対処する」という対応だけでは遅いという考え方から、カスタマーサポートとカスタマーサクセスの両立が求められるようになりました。
カスタマーサクセスは現在BtoBでSaaS型のサービスを提供しているIT企業を中心に広まっていますが、今後は製造業やサービス業、流通業、小売業、飲食業など幅広く広がっていくでしょう。
シェアリングエコノミーの拡大により、消費者のニーズが「所有」から「利用」や「共有」へとシフトしてきているため、サブスクリプションモデルのサービスも広がることが予想されるためです。
カスタマーサクセスが必要となる会社の規模や業界とは
カスタマーサクセスは企業にとって新たな業務や部門になるので、人材の配置転換や新しい人材を確保するコストがかかります。
そのため、カスタマーサクセスは比較的規模が大きい企業が導入しているのが現状です。
カスタマーサクセスが必要となる会社の規模や業界の考え方としては、
- 新規顧客の獲得にかかるコスト
- 既存顧客の解約による売上減少
- アップセルの期待値からなる売上増加
を分析して、新規顧客獲得にかかるコストの方が少ないのであれば、マーケティングや営業にリソースを回した方が費用対効果を出せる可能性が高いかもしれません。
ある程度商品やサービスの導入が進んだ業界で新規顧客獲得コストが高止まりしており、解約率を下げることと既存顧客の単価を向上させた方が良い業界にはぴったりだと言えます。
また、セールスフォース・ドットコムが長らく提供しているSFA、CRMのサービスやソリューションを元にした、経営における最新のカスタマー・エクスペリエンス(CX)のノウハウが詰まったCX3.0の考え方を提唱しています。
消費者の行動原理と経済的なロジックを重視するCX 3.0の提唱者のジョン・グッドマン氏が考えている「グッドマンの法則」も有名です。
グッドマンの法則とは、顧客のクレーム対応とカスタマーロイヤルティの関係性、さらにクチコミによるマーケティング効果を実証的に描いたもので、40年近く前にアメリカ 大手企業の数百社に対しグッドマンら調査チームが大規模な市場調査を実施して発見しました。
以下のリンクからセールスフォース・ドットコムのホワイトペーパーのダウンロードも出来ますので、ご関心がある方は一度ご参照いただいても良いと思います。
カスタマーサポートとカスタマーサクセスの両立と他部門との連携も重要
カスタマーサクセスは比較的新しいキーワードではありますが、顧客の立場になって不満やストレスが発生しない製品やサービスをつくるという姿勢は目新しいものではありません。
また、カスタマーサクセスの部署や担当を付けたから必ずうまく行くというわけではなく、当然ながら自社の製品やサービスに競争力やポテンシャルがないと顧客に継続的に使ってもらうのは難しいと言えます。
カスタマーサクセス部門単体で利益を生み出せるようになるのが理想的ではありますが、カスタマーサポートはもちろん、サービスの開発部門や営業・マーケティング部門とも連携して、強い組織とサービスを提供できる企業を目指すのが良いと言えるでしょう。
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