資本金額が1億円以内の中小法人のメリット、1億円を超えるデメリットとは

資本金額が1億円以内の中小法人のメリット、1億円を超えるデメリットとは

会社の規模や資産の目安となる項目の一つに資本金額があります。

基本的に大企業と呼ばれている会社やイメージされている会社であれば資本金の額も大きいことが多いですが、資本金を意図的に1億円以内にしている会社も多いのはご存知でしょうか。

今回は資本金額が1億円以内の中小法人のメリット、1億円を超えるデメリットについてご紹介いたします。

資本金とは

資本金とは、事業を円滑に進めるために、株主が会社に出資した金額のことです。

会社を設立するにあたっての運転資金だけでなく、新規事業を立ち上げる際などに資金が必要になったとき、株主や投資家から調達した資金も資本金に分類されます。

かつては会社の設立について、「株式会社なら資本金1,000万円以上、有限会社なら資本金300万円以上が必要」という法律でしたが、2006年の商法改正によって最低資本金制度がなくなり、新会社法の施行後は資本金が1円でも会社を設立することができるようになりました。

ご参考までに総務省・経済産業省の「平成28年経済センサス‐活動調査結果」によると、全国の企業のうち資本金が3,000万円未満の割合は約88%、500万円未満の割合は約40%となっています。

資本金企業数全体に占める割合
300万円未満106,659社約6.5%
300万円以上500万円未満565,289社約34.7%
500万円以上1,000万円未満214,971社約13.2%
1,000万円以上3,000万円未満546,245社約33.5%
3,000万円以上5,000万円未満68,136社約4.2%
5,000万円以上1億円未満46,569社約2.9%
1億円以上3億円未満15,371社約0.9%
3億円以上10億円未満7,340社約0.5%
10億円以上50億円未満3,602社約0.2%
50億円以上2,182社約0.1%

参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)「平成28年経済センサス‐活動調査」

資本金の意味とは?資本準備金、資本余剰金との違いについて解説

資本金の意味とは?資本準備金、資本余剰金との違いについて解説

2021年6月14日

資本金が多いメリット

資本金が多いメリット

続いて資本金が多い会社のメリットについてどのようなものがあるのか見ていきましょう。

会社の信用力が高まりやすい

資本金が多い場合のメリットとして考えられやすいのが会社の信用力が上がるということです。

資本金の金額が大きければ大きいほど、会社への信用力は高まりやすくなります。

例えば資本金が100万円の会社と10億円の会社があった場合、事業内容などはわからなくても資本金が10億円の会社の方が信用力が高そうと思う方がほとんどだと思います。

なぜなら、資金力があることの証明であり、支払い能力がある可能性が高いからです。

資本金が少ないと一般的には支払い能力に疑問を感じてしまい、取引がきちんとできるのか不安に思ってしまう場合も考えられます。

融資を受けやすい

資本金が多い方が銀行からの融資が受けやすくなります。

理由は上述のように支払い能力があると見られやすいからです。

日本金融政策公庫の中には、自己資本を要件として掲げている制度があります。

例えば新創業融資という制度では自己資本要件として以下の要件を掲げています。

自己資金の要件

新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方

ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします。

参考:日本金融政策公庫 新創業融資

自己資金が少ないと融資の金額も少なくなるという意味合いです。

債務超過になりにくい

資本金が少ないと会社設立後すぐに債務超過となってしまう可能性もあります。

起業したばかりで大きな売り上げをあげるのは難しい場合も多いでしょう。

資本金が少なければ入金の前に自己資本が0%を下回って債務超過となってしまいかねません。

債務超過と見做されてしまうと金融機関からの融資が厳しくなるため、経営の危機となってもおかしくありません。

資本金が1億円を超えないメリット=1億円を超えるデメリットとは

資本金が1億円を超えないメリット=1億円を超えるデメリットとは

では資本金が1億円を超えないメリット=1億円を超えるデメリットにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

一言で言うと資本金が1億円を超えると、支払う税金が多くなります。

具体的に以下で詳しくご紹介いたします。

外形標準課税の対象になる

資本金が1億円を超える法人は「外形標準課税」が適用されます。

外形標準課税とは、事業所の床面積や従業員数、資本金等及び付加価値など外観から客観的に判断できる基準を課税ベースとして税額を算定する課税方式のことです。

法人税等は会社の利益に対してかかる税金で、税引き前利益の20%~30%程度がかかることが多いです。

ただし、外形標準課税は利益が出ていない法人に対しても適用されるため、資本金が1億円を超える会社であれば税金の負担が重くなるということになります。

外形標準課税の内訳については以下の通りです。

資本金(資本割)

資本金が1億円を超えて”外形標準課税”が適用される場合には資本金、資本準備金などの額に応じて税金がかかります。

例えば東京23区に会社がある場合、令和2年以後は資本金等の額に対して0.525%の法人事業税になります。

資本金1億円の会社の場合

1億円×0.525% = 525,000円

赤字でも年間525,000円の法人事業税を負担しなくてはなりません。

付加価値割(給料・利息・賃借料)

外形標準課税が適用される場合には他にも社員への給料、利息の支払、賃借料の支払額に応じて税金がかかります。

給料(報酬給与額)

資本金が1億円を超えて「外形標準課税」が適用される場合、給料の支払額に応じて税金がかかってきます。

給料総額が多ければ多いほど税負担が多くなると、給料の抑制や雇用に慎重になる会社が増えてしまう可能性が高いため、給料については雇用安定控除、所得拡大促進税制といったものがあり、以下の利息や賃借料と比べると税金への影響はやや少ないと言えるでしょう。

利息

会社が支払った利息が多ければ多いほど税金がかかってきます。

銀行借入によって資金調達を行っている場合、返済に伴う利息が多くなりその分コストが増加します。

製造業や建設業など設備投資のために借入金が大きい業界の会社には無視できない税金と言えるのではないでしょうか。

賃借料(純支払賃借料)

会社の家賃や駐車場などの賃料が多ければ多いほど税金がかかります。

さらに上記の給料、利息、賃借料に利益を加えた金額に令和2年以後は1.26%の税金がかかります。

資本金が1億円を超える企業の場合、外形標準課税のコストは無視できなくなってくると思います。

中小法人のメリットがなくなってしまう

中小法人のメリットがなくなってしまう

資本金が1億円を超えると法人税法上の「中小法人」ではなくなってしまうため、以下の制度の対象外になります。

軽減税率の特例が受けられなくなる

中小法人の場合には利益額が年間800万円までという条件付きですが、利益に対して法人税は15%しかかかりません。

800万円を超えた部分は23.2%になりますが、大企業になると最初から23.2%になるため年間で最大656,000円の税金の違いが出てきます。

軽減税率の計算例

1年間の利益800万円×(税率 23.2% – 15%) = 656,000円

1年あたりでは最大656,000円ですが、10年で計算すると6,560,000円となるため長い目で見ると結構な金額になるのではないでしょうか。

交際費が経費にならない

交際費は1人当たり5,000円以下など少額なものでない限り、税務上の経費として認められにくいです。

しかし、中小法人の扱いであれば交際費が年800万円まで経費として認められています。

交際費が比較的多い企業であれば税負担の軽減に繋がると思います。

赤字を翌年以降の黒字と相殺できるのが50%まで

資本金1億円以下の中小法人の場合には赤字を翌年以降の黒字と相殺することができます。

しかし、大企業になると相殺できる金額が利益の50%までです。

従って、大企業の場合、黒字になったら、過年度からの赤字の繰り越しがあったとしてもある程度の税金コストが発生してしまいます。

赤字の金額が小さければさほど大きい影響にはなりませんが、仮に1億円など大きい金額の場合には相殺金額の50%も大きくなります。

資本金が1,000万円以上だと消費税の免税措置が受けられない

資本金が1,000万円以上だと消費税の免税措置が受けられない

ちなみに会社設立時の資本金が1,000万円を超えた場合には消費税の免税措置が受けられなくなります。

資本金1,000万円未満の小規模な新設法人は、設立1年目、もしくは2年目(開業した年の翌年の1月1日から12月31日まで)は消費税が免除となりますので、大きな差です。

ただし、2年目は前年の1月1日~6月30日にあたる特定期間に課税売上高が1,000万円を超えた場合は課税対象者になります。

消費税の10%は設立したての中小企業にとっては大きな金額になることもあるため、資本金1,000万円を越すかどうかを考えてみても良いかもしれません。

資本金1億円の有名企業も

上記のようなデメリットを考えて有名企業でも資本金1億円未満にしている場合もあります。

上場企業の場合には資本金が1億円未満の会社は少ないですが、それでも資本金1億円未満にしている会社もありますし、MBOなどで上場廃止をした企業でもい受けられます。

資本金1億円未満の有名企業をいくつかピックアップいたしました。

カルチュア・コンビニエンス・クラブ

カルチュア・コンビニエンス・クラブ

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と言えばTSUTAYAが有名ですが、1983年に大阪府枚方市で蔦屋書店 枚方駅前店として創業し、1985年に会社設立となりました。

Tポイントの運用管理も行なっており、幅広い企業との提携を元にデータベースマーケティングも古くから取り組んでいます。

MBOによって2011年に上場廃止となりました。

項目内容
売上(連結含む)3,606億円(2109年)
事業内容書店の運営、ポイントの運用管理など
上場廃止日2011年7月22日

ドワンゴ

ドワンゴ

1994年12月に米テキサス州ヒューストンで動画研修やオンラインゲーム接続環境を提供するサービスDWANGOが同社の始まりです。

1996年にサービスを日本、韓国、シンガポールに拡張して、有限会社ドワンゴジャパンを設立し、1997年8月に株式会社ドワンゴが設立されました。

ニコニコ動画でもお馴染みですが、KADOKAWAとの経営統合によって両社ともに上場廃止となりました。

項目内容
売上(連結含む)280億67百万円(2018年3月期)
事業内容ネットサービスおよびコンテンツ開発など
上場廃止日2014年9月26日

吉本興業

吉本興業

吉本興業は1912年の創業以来、日本の芸能プロダクションで最も古い歴史を持っており、所属人数や影響力など業界トップの会社の一つと言えるでしょう。

巨人軍を他社と共同で設立したり、日本プロレス協会を立ち上げるなど、スポーツ界とのつながりも深くスポーツ関連のマネジメントも行なっています。

TOBによって非上場化となり、主要民放TV局などが株主となっています。

項目内容
売上(連結含む)488億円(2009年)
事業内容芸能事務所、テレビ番組製作会社、劇場などの運営など
上場廃止日2010年2月24日

ホリプロ

ホリプロ

1960年5月に堀プロダクションとして設立され、1990年10月に株式会社ホリプロへと変更されました。

1989年に芸能プロダクションとして初の株式公開を行いましたが、2011年12月にMBOによって上場廃止を発表、2012年5月に上場廃止となりました。

項目内容
売上(連結含む)159億円(2016年3月期)
事業内容芸能プロダクション、CM・テレビ番組制作など
上場廃止日2012年5月1日
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資本金1億円を超すかどうかは株主とも相談して決めよう

資本金は信用力を示す指標ではありますが、上記のように資本金が1億円を超えることによるデメリットもあります。

税金のみを考えるのであれば、資本金1億円に留めるという会社も多いのではないでしょうか。

一方で資本金は株主とも相談しないといけない場合もあるため、戦略的に決定することがおすすめです。

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ABOUTこの記事をかいた人

証券会社、IT企業役員、ベンチャー企業などを経て2016年10月より独立。2017年7月株式会社Milkyways設立、代表取締役CEO。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻(WBS)修士課程卒。専攻はベンチャー企業論、ベンチャー経営論。趣味はダンスとラーメン。