未公開企業の株価の求め方と時価総額算定に必要なデューデリジェンスの仕方

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未公開企業の株価の求め方と時価総額算定に必要なデューデリジェンスの仕方

日本の企業数は300万社とも言われておりますが、そのうち上場をしている企業は約4,000社程度と99%以上の企業は未公開企業(非上場企業)となります。

株式を上場していれば証券市場での売買によって株価は決まりますが、未公開企業ではできないためどのように計算すればよいのでしょうか。

今回は未公開企業の株価の求め方と時価総額算定に必要なデューデリジェンスの仕方についてご紹介致します。

未公開企業の株価の算定が必要になる理由

未公開企業の株価の算定が必要になるのはどのような時があるでしょうか。

一般的には多くの未公開企業は代表者など少数の大株主が安定して株式を保有し続けることが多いため株式投資の対象にはなりにくいです。

株式の売り手も買い手もいないのであれば、値段をつける必要はそこまでありません。

未公開企業の株価が必要になるのは、未上場でも株式が動くことがあるからです。

例えば、未公開企業のオーナー社長が、投資家に出資を依頼するとき、第三者割当増資という手法を使います。

新株を引き受ける出資者は、その会社にお金を支払うことになりますが、その金額は株価によって決まります。

また、株主が亡くなったり事業承継などで株式を相続する場合も、株価を評価して適切な値段をつけないと相続金額や株式の割合を決定できません。

株式が「動く」ときに株価がいい加減に決まってしまうと、誰かが不当に損をしたり、適正な税額を納められなくなってしまいます。

未公開企業の株価の求め方と時価総額の算出方法

未公開企業の株価の求め方と時価総額の算出方法

未公開企業の株価の求め方には、主に次の4つの方法があります。

  1. 純資産方式
  2. 収益方式
  3. 配当還元方式
  4. 類似業種比準方式
株価がわかると時価総額もわかります

株価を求めると発行している株数を掛け合わせることでその会社の時価総額も算出ができます。

例えば1株1万円で1万株を発行している会社であれば、

1万円 × 1万株 = 1億円 という計算で時価総額がわかります。

逆に時価総額を算出してから発行株式数で割って株価を求める場合もあります。

未公開企業の株価の求め方について順番に見ていきましょう。

純資産方式とは

純資産方式とは、純資産を基準にして株価を決める方法です。

純資産とは、貸借対照表の純資産のことで、「総資産額-総負債額=純資産」で算出します。純資産は自己資本と呼ばれることもあり、出資金と事業活動から得た利益などから構成されます。

純資産は貸借対照表に明示されているので、純資産方式は算定方法の透明性が図れるメリットがあります。ただ、「企業の本当の価値」は資産や負債だけでは測れないので、企業価値と株価が乖離してしまうことがあります。

純資産方式には、次の3つがあります。

簿価純資産法

簿価純資産法では、株価を次のように算出します。

株価 = 簿価純資産額 ÷ 発行済株式総数

簿価純資産法は、最も単純な純資産方式といえます。

修正簿価純資産法

修正簿価純資産法では、次のように算出します。

株価 = 含み益/損を加味した簿価純資産額 ÷ 発行済株式総数

修正簿価純資産法では含み益や損を反映させるので、簿価純資産法と比べて株価が現在の価値に近くなります。

時価純資産法

時価純資産法では、次のように算出します。

株価 = 時価純資産額 ÷ 発行済株式総数

時価純資産法も、目的は株価を「企業の本当の価値」に近づけることですが、時価の評価自体が難航することがあります。

収益方式とは

収益方式は、企業のキャッシュフローに焦点を当てて株価を算出する方法です。

キャッシュフローは現金の流れのことであり、次の計算式で表します。

・キャッシュフロー=キャッシュイン(企業の現金が増える)-キャッシュアウト(企業の現金が減る)

キャッシュインには、純利益や減価償却費などが含まれ、キャッシュアウトには、不動産や設備に要する費用などが含まれます。

キャッシュフローは企業の収益力が反映されるので、キャッシュフローで株価を決めることは、企業の価値を重視していることになります。

しかし、恣意的に現金の流れをつくることができてしまうという欠点もあります。

収益方式には次の2つの方法があります。

収益還元法

収益還元法は次の計算式で株価を算出します。

株価 = 将来の純利益を資本還元率で還元した額 ÷ 発行済株式総数

資本還元率を加味しているところが、収益還元法の特徴です。

資本還元率を加味することによって、市場金利や対象企業の調達金利などを株価に反映させることができます。つまり、将来リスクが株価に影響してきます。

ただ、勘案する要素が多くなり、当事者間での擦り合わせが難航することもあります。

DCF法

DCF法は次の計算式で算出します。

株価 = 将来のフリーキャッシュフローを現在の価値に割り引いた額 ÷ 発行済株式総数

DCFはディスカウントキャッシュフローの略称で、その名のとおり、フリーキャッシュフローを割り引いています。

フリーキャッシュフローとは、自由に使える現金のことです。

DCFも勘案する要素が多いため、算定の難しさは収益還元法と同レベルです。

配当還元方式とは

配当還元方式は、将来の配当金に着目して株価を決めます。

計算方法は次の2種類の方法があります。

配当還元法

「配当還元法」では次の計算式を使います。

株価 = 将来の年間配当額を資本還元率で還元した額 ÷ 発行済株式総数

将来の配当額を使うことで企業の価値を反映させることができますが、そもそも配当していない企業の場合、計算できません。

ゴードン・モデル法

「ゴードン・モデル法」では次の計算式を使います。

株価 = 将来の配当金 ÷ (資本還元率-投資利益率×内部留保率)

投資利益率と内部留保率が高くなると、株価が高くなることがわかります。

つまり、利益が多くなるほど、また、会社内に留保する利益剰余金が多くなるほど、株価が高くなります。

ゴードン・モデル法では企業の稼ぐ力を株価に反映させることができます。

ただし、内部留保の額が大きすぎる企業については、もっと積極的に投資すべきであるという批判もあります。

内部留保が多くなることで株価が高く評価されることには、異論もあるでしょう。

類似業種比準方式とは

類似業種比準方式とは、株価を算定しようとしている未公開企業と類似した上場企業の株価を参考にする算定法です。

例えば、未公開企業A社と上場企業B社がどちらも化粧品メーカーで、売上高も利益も従業員数も同程度だったとします。

このとき、証券市場でのB社の株価をA社の株価と推定することは、合理性があります。

株価に合理性を持たせやすく、計算方法も簡単です。

ただし、上場企業B社が不祥事を起こしたり、業界全体が一時的に落ち込んでいたりすると、A社の正しい株価を評価しにくくなります。

デューデリジェンスの種類と実施方法とは

デューデリジェンスの種類と実施方法とは

未公開企業の株価を算定することは、デューデリジェンスの一種です。

デューデリジェンスとは、投資家が、投資対象の企業を調査することです。また、M&Aでも、買収元企業は買収先企業に対しデューデリジェンスを実施します。

デューデリジェンスを行うことで、未公開企業でも時価総額を算定することができます。

デューデリジェンスには大きく分けて5つの方法があり、順番に見ていきましょう。

財務デューデリジェンス

デューデリジェンスで最も重要なのは財務のチェックです。

収益性を確認することで、投資額の回収期間を推計することができます。

また、企業の資産が帳簿とおり実在するか確認したり、帳簿にない負債がないか調べたりすることも、財務からのアプローチになります。

法務デューデリジェンス

コンプライアンスがこれだけ厳しくなると、不適切な法務業務は、それだけで企業価値を押し下げる要因になります。

また、訴訟を抱えているかどうか、特許などの知的財産の管理は行き届いているか、といったことも調べます。

労務デューデリジェンス

コンプライアンスの絡みでは、労務も重要です。残業代の未払いは、隠れ負債と考えることができます。

また、ブラック企業の兆候が、労務業務に隠れているかもしれません。

今や、ずさんな労務管理は、総務部長や職場長だけでなく、経営者の責任も厳しく問われます。

税務デューデリジェンス

未公開企業の場合、オーナー社長の財産と会社の財産が明確にわかれていないことがあります。

デューデリジェンスで不適切な税務処理を見つけることができます。

人材デューデリジェンス

経営資源のうち、人材に価値を見出すことが非常に多いです。

特に最近ではエンジニアのように採用が難しく採用費用が高い職種で優秀な人材を抱えている企業には高い価値がつくことも珍しくありません。

適材適所の人事を行なっているか、実績を挙げている人に多くの報酬を与えているか、昇格昇給のルールはフェアか、過度な年功序列賃金になっていないか、といった人事政策や人事運営も、企業価値に影響をしてきます。

一方で人材を目当てに企業を買収しても、人が続々とやめてしまうこともあるため目論見通りに行かないケースも見受けられます。

リクルートが運営している事業継承総合センターで株価の簡易計算が可能

リクルートが運営している事業継承総合センターで株価の簡易計算が可能

事業継承総合センターは、リクルートが運営を行うM&A・事業承継のプラットフォームです。

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Origami社の買収から見る未公開企業のデューデリジェンスの難しさ

Origami社の買収から見る未公開企業のデューデリジェンスの難しさ

参考:Origami

2020年1月23日にキャッシュレス決済事業を行うOrigami社がメルカリ子会社のメルペイに買収されるとの発表がありました。

詳細などはここでは触れませんが、未公開企業の時価総額を毎月発表しているfor Startups社の2020年1月のランキングによると、Origami社は日本で15位の417億円と算出があります。

メルペイの買収金額は公表されてはいませんが0円で買収されたと報じられており、想定企業価値との差額が大きくなった事例として挙げられます。

未公開企業の株価算出には様々な観点から調べよう

未公開企業の株価の決め方にはさまざまな種類があり、それぞれ一長一短があります。

上場企業の株価でも経営状況や株式市場の情勢によって乱高下することは珍しくありませんので、未公開企業の株価の評価はさらに難しいと言えます。

企業価値には見るべき観点がいくつもあり、財務、法務、労務、税務、人事など様々な部分から企業を調べないと、単純に決算書だけを見てデューデリジェンスを行った場合と乖離が出てしまう可能性がありますので注意しましょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

証券会社、IT企業役員、ベンチャー企業などを経て2016年10月より独立。2017年7月合同会社Milkyways設立、代表社員CEO。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻(WBS)修士課程卒。専攻はベンチャー企業論、ベンチャー経営論。趣味はサルサとラーメン。