動画配信サイトやアクセスの多い大規模サイト・アプリではトラフィックが多くなるため、表示速度を早くするために様々な工夫が行われています。
その中でも代表的な技術として取り入れられているのが負荷分散を目的としたCDN (コンテンツデリバリーネットワーク)の利用です。
今回は動画配信や大規模サイトで使われていることの多いCDNについてご紹介いたします。
目次
CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)とは
CDNはContent Delivery Networkの頭文字を取った略称のことです。
ウェブコンテンツをインターネット経由で配信するために最適化されたネットワーク、サーバ構成の総称を指します。
なぜCDNが必要なのかというと、アクセスやデータのダウンロードが集中するとページの表示速度が遅くなってしまうことや、場合によってはサーバがパンクしてしまいページが表示できなくなってしまってビジネスに悪影響を及ぼすためです。
ページの表示速度が低下することでサイト離脱やネガティブなイメージに繋がってしまい、SEOにも悪影響を与えることがわかっています。
厳密にいうと表示速度の遅いサイトの検索順位が下がるのではなく、速いサイトの順位が上がるようですが、影響としては同じ結果に繋がると言えるでしょう。
Amazonの調査データによると、ページ表示速度が0.1秒遅くなるだけで売り上げが1%低下したというレポートもあります。
また、Googleによるとページの表示速度が0.5秒遅くなるとアクセス数が20%も減少する可能性があることも発表されています。
ページ表示速度が遅いことでユーザビリティに悪影響が出ると考えられますが、具体的には以下のような物が挙げられます。
- ページからの離脱率増加
- 検索順位の低下
- アクセス数の減少
- CVRの低下
- 売上の減少
- 顧客満足度の低下
CDNを使った負荷分散と高速化の仕組み
CDNを使った負荷分散と高速化の仕組みについて見ていきましょう。
CDNを使わない一般的な方法では、サイトやコンテンツのアクセスデータを配信するサーバー(オリジンサーバーと呼ばれます)を用意します。
オリジンサーバーにデータを置き、アクセスしてきたユーザーに対してコンテンツの配信を行うのがCDNを使わないネットワーク設計です。
CDNを利用した配信ではオリジンサーバーからデータを配信するだけではなく、世界中に張り巡らされたCDNサーバーを通じてアクセスしたユーザーからなるべく近い拠点のサーバ(エッジサーバ)から配信します。
例えば日本からアクセスしたユーザーが日本のサーバーから配信されたwebサイトを見るのと、アメリカのサーバーから配信されたサイトを見るのでは一般的には距離的に近い日本のサーバーのwebサイトの方がアクセスが早くなります。
このためCDNはグローバルで運用されている大企業がサービスとして提供していることが多く、地理的に分散させるのが効果的とされています。
効率的かつ高いパフォーマンスで安定的にコンテンツ配信を実行するために開発された技術や仕組みと言えるでしょう。
代表的なCDNサービス
CDNは日本企業だけではなくグローバル的にも多くの企業が提供していますが、代表的なCDNサービスを見ていきましょう。
Akamai CDN
参考:Akamai
Akamai(アカマイ)社は、MITの応用数学教授トム・レイトンらが中心になって1998年に設立された世界最大手のコンテンツデリバリネットワーク(CDN)の企業です。
世界130カ国以上に分散するサーバ群によって、グローバルでの負荷分散サービスとクラウドセキュリティーサービス提供しています。
会社名は賢いを意味するハワイ語に由来しているようです。
提供している顧客から毎日10億件を超えるヒットに対してCDN配信を実施しており、インターネット通信量の15〜30%を取り仕切っていると言われています。
高品質の分やや金額も高めではあります。
Amazon CloudFront
Amazon CloudFrontはAmazon Web Services社が提供するグローバルなコンテンツ配信ネットワーク(CDN)です。
元々は自社のamazon.comのECサイトで使うための技術でしたが、多くの企業に提供することで売上に繋がることやスケールメリットによって自社の運営コストも下がるため、他社へのサービス提供を行った経緯があります。
CloudFrontは使用した分だけのお金を支払う料金制をとっており、CDN以外にもストレージサーバーなど多様なサービスを明朗会計で提供しています。
Cloudflare CDN
参考:Cloudflare
Cloudflareは、プロジェクト・ハニーポットでともに活動していたマシュー・プリンス、リー・ホロウェイ、ミチェル・ザトリンにより2009年に設立されました。
2010年9月に開催されたTechCrunch DisruptカンファレンスでサービスとしてのCloudflareがスタートし、2011年6月にLulzSecのWebサイトにセキュリティソリューションを提供したことによりメディアの注目を集めています。
2020年7月に日本法人のクラウドフレアジャパン株式会社を開設したことで、日本事業にさらに注力することが期待されていると言えるでしょう。
CDNを使うメリットとは
CDNを使うとどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
アクセス集中によるサーバー負荷を解決
アクセス数の多いサイトやアプリの場合、オリジンサーバだけにデータを置いておくとアクセス数に追いつかずに表示速度の低下やサーバがパンクしてアクセスが出来ないことが起こります。
また、Yahoo!ニュースなどでサイトやブログが取り上げられた際に、想定以上のトラフィックが発生してしまうこともあるかもしれません。
アクセス数が増えて多くのユーザーが訪れてくれることは企業にとって良いことですが、なかなかアクセスが出来ないサイトやサーバーが落ちてしまうとイメージの悪化や機会損失にも繋がってしまうでしょう。
上記のような事態を起こさないためにもCDNを利用することでキャッシュサーバにコンテンツのキャッシュが作成され、オリジンサーバーへの負荷分散が行われるためページ表示速度の遅延が起きにくいネットワーク構成となります。
オリジンサーバーの費用や工数が削減できる
アクセス数の多いサイトや動画配信でCDNを利用しない場合には別でオリジンサーバーを用意する必要があります。
CDNを利用するとオリジンサーバーを大量に用意する必要がなくなるため、オリジンサーバーの費用や工数が削減できます。
遠距離でも遅延が起きにくい
アクセスしたユーザーとコンテンツが配置されているサーバーの距離が遠ければ遠いほど、コンテンツの表示や配信に時間がかかってしまいます。
例えば海外の方と電話やオンラインをするとわかるように、物理的に距離が離れることによってデータ通信に遅延が発生してしまいます。
CDNを用いることで世界中に分散配置されたキャッシュサーバーの中にコンテンツをキャッシュしておくことで、アクセス元のユーザーからなるべく距離が近いサーバーからデータを配信することで遅延が起こるのを防ぐことができるのです。
グローバルで配信を行いたい場合にはグローバル展開しているCDNを利用するのがおすすめです。
セキュリティーの向上ができる
近年ではサイバー攻撃に伴う被害が増加しており、自社が標的となる可能性も無視できなくなってきました。
CDNではセキュリティーへの対応を強化しているサービスも増えており、オリジンサーバーだけで運用するよりセキュリティーの向上が期待できるものもあります。
例えば大量のアクセスを送り続けることによって、サーバにつなぐネットワークを飽和状態にしてしまい、アクセス遮断を起こすサイバー攻撃に対して、異常を検知したアクセス元を遮断する機能を持ったCDNサービスで対応することも可能です。
トラフィックが多いサイトの負荷分散ではCDNを利用してみよう
CDNの技術は多くのサイトで使われており、有名なサイトやアプリではほとんどの場合に利用されています。
ただ、CDNを導入することで全てのサイトの速度が上がるというわけではなく、アクセスが多くて遅延が起きている場合に効果があるということを覚えておきましょう。
画像などのコンテンツサイズの見直し、HTMLやCSSの記述見直しでサイト速度の向上が期待できることも多いので合わせて行うことがおすすめです。
CDNのサービスにも色々な種類がありますので気になったものがあればお試しなどしてみても良いと思います。
コメントを残す