新型コロナウイルスの影響もあり、インターネットで動画を視聴することが増えたのを受けて、動画配信や動画広告にも注目が集まっています。
動画広告市場は拡大を続けており、動画広告でマネタイズに乗り出す企業も増えてきました。
今回は企業が動画広告でマネタイズするために知っておきたい知識についてご紹介いたします。
目次
動画広告とは
動画広告はWEB広告の一種でテレビCMと同様に「動画」を使った広告手法です。
一般的に動画広告と呼ばれているものは、正しくは「インターネット動画広告」と言えるでしょう。
動画広告には様々なタイプがあります。例えばページが表示されると自動的に再生が始まるもの、クリックされると再生されるもの、本編の動画が始まる前に再生されるものなどがあり、目的や用途によって使い分けがされています。
動画広告の特徴は、「ユーザーの属性ごとにセグメント分けした配信が可能なこと」、「広告の効果測定を可視化すること」が挙げられるでしょう。
テレビCMの場合、リーチ数が圧倒的に多いため幅広く配信することが出来ますが、広告の効果測定が不透明になりやすい傾向にあります。
動画広告の市場規模とは
サイバーエージェントの調べによると、2017年の動画広告市場は、対前年比で163%の1,374億円に達する見通しです。
参考:サイバーエージェント 2017年国内動画広告の市場調査を実施
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=20966
今後はモバイル端末からの視聴の増加や、SNS上での動画再生の伸びが予想されており、2023年には3,485億円にのぼるとも予測されています。
マネタイズの新たな収益手段として、メディアや広告代理店からも注目を浴びています。
自社サイトとYouTubeで動画広告を行う違いとメリット
動画広告に様々な種類があることをご紹介させていただきましたが、動画広告を利用してマネタイズしていくにはどのような方法があるか見ていきましょう。
大きく分けると、「YouTubeチャンネル上で動画広告を使ったマネタイズ」、「自社サイトで動画広告を使ったマネタイズ」があります。
マネタイズの観点からそれぞれの違いとメリット、デメリットについてご説明します。
YouTubeチャンネル上で動画広告を使ったマネタイズ
動画サイトといえばYouTubeを思い浮かべる人が多いでしょう。
最近では子供のなりたい職業としてYouTuberが上位に入るなど人気です。
利用するメリットとしては「圧倒的な視聴者数・視聴回数」、「出稿できる広告在庫を大量に保持している」、「配信にかかるインフラコストが無い」ことが挙げられます。
一方で、YouTubeを利用するデメリットとしては、「動画広告収入がYouTubeのつくったルールに従う」といったことが挙げられるでしょう。
コンテンツによって違いはありますが、YouTubeの1再生当たりの広告収入は一般的に0.1円以下と言われています。
仮に1再生の広告収入が0.1円だとすると、10万回動画が再生されたとしても、1万円ほどの広告収入にしかなりません。
また、YouTubeの利用規約の変更や、YouTubeチャンネルのアカウント停止といったことも頭に入れておかなくてはなりません。
つまり、動画再生数は稼げても、動画広告によるマネタイズを考えた場合には費用対効果は決して良くないと言えますし、自分たちでコントロールできない部分も多く存在してしまいます。
自社サイトで動画広告を使ったマネタイズ
自社サイトの中で動画広告を配信するとなれば、コンテンツに合わせて広告の出稿方法を変更したり、そのルールを自分たちで決めることが出来ます。
多くの視聴者が見込まれるスポーツ試合動画、有名アーティストやアイドルのイベント動画を配信する企業では、YouTubeを利用する場合よりも収益性が期待できるのではないでしょうか。
デメリットとしては、初めから多く視聴者を保持していない場合、独自で視聴者を増やすための努力や工夫が必要となります。
また、YouTubeと違って動画配信プラットフォームを利用した動画広告マネタイズの場合には、インフラコストがかかりますので、ある程度の視聴回数が見込めないと赤字になってしまう可能性もあるため注意しましょう。
なぜ動画広告が注目されているのか
ではなぜ急速に動画広告の需要が増えており、注目を集めているのでしょうか。
それは「若者のテレビ離れ」、「スマートフォンの普及」、「SNSによる動画広告の拡大」といった要因が挙げられます。
若年層のテレビ離れ
若年層のテレビ離れの傾向を踏まえて、若者をターゲットとしている企業を中心に、テレビCMだけではなくインターネット上の動画広告に目を向けはじめました。
日本人全体のテレビ視聴平均利用時間は2010年頃から減少傾向にあり、特に10代・20代はネット平均利用時間がテレビ視聴時間を上回るという調査結果が総務省より発表されています。
参考:総務省 平成26年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
http://www.soumu.go.jp/main_content/000357569.pdf
スマートフォンの普及
スマートフォン普及率の上昇にともない、日常的に動画を視聴する人口も増加しています。最近のスマートフォンでは高品質の動画も十分視聴可能で、wi-fiを利用すればストレスも感じません。
中にはスマートフォンに合わせた縦型の動画フォーマットも増えていることから、動画はモバイルファーストを重要視しているとも言えるでしょう。
スマートフォン向けの動画広告にはアプリのインストール促進、ECサイトをはじめとしたネット商材の購買促進のような「獲得系広告」と呼ばれる、ダイレクトレスポンスを目的とした出稿需要も増加しています。
SNSによる動画広告の拡大
YouTubeだけではなく、最近急速に広がっているのがFacebookやInstagram、TikTokを始めとしたSNSメディアでの動画広告です。
動画広告は「シェア」や「いいね」などとの相性が良く、一瞬で多くの人にリーチすることも可能なため、広告主にとっては有望なメディアとして期待が寄せられています。
動画広告の種類とは
現在日本で見受けられる動画広告にはどんな種類があるのでしょうか。動画広告が配信されるタイミングにより、「プレロール広告」「ミッドロール広告」「ポストロール広告」の3つのタイプがあります。
プレロール広告
プレロール広告は動画本編の再生前に配信される動画広告です。
広告再生から数秒経った後にユーザーが視聴選択できる「スキッパブル動画広告」と、強制的に視聴する「ノンスキッパブル動画広告」の2種類があります。
プレロール広告の特徴としては、動画本編の視聴前に広告を配信するため視聴される可能性が高いことが挙げられます。
また、プレロール広告の一種で「インタラクティブプレロール」というフォーマットもあり、視聴者が画面を直接操作しインタラクティブに動画広告を見ることができます。
動画プレーヤ内に複数の動画を配置したり、リンク情報を直接表示したりすることで、豊富な情報を動画広告に盛り込むことも可能です。
ミッドロール広告
ミッドロール広告は動画本編が再生されている途中で表示される動画広告です。本編視聴中に表示されるので離脱の可能性が低いのが特徴です。
ポストロール広告
ポストロール広告は動画本編の終了後に配信される動画広告です。
本編の視聴を妨げることがないので視聴者にストレスを感じさせないのが特徴です。
しかし、視聴者の関心を強く引かないと、本編から継続して視聴されない可能性が高いというリスクがあります。
動画広告を配信するための方法とは
動画広告を配信するためにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは2つの方法についてご紹介いたします。
サーバサイド広告挿入(SSAI)
サーバサイド広告挿入とは、Server-Side Ad Insertionのことで、頭文字を取ってSSAIとも呼ばれます。
サーバサイド広告挿入は、動画本編と動画広告をくっ付けることによって、動画視聴者が広告をブロックしている場合でも、表示させることが可能となります。動画広告の読み込み時間を短くできることも特徴としてあげられるでしょう。
デメリットとしては、細かい動画広告の配信技術や以下に記載するVPAIDが利用できないため、比較的単純な技術を利用した動画広告の配信となってしまいます。
クライアントサイド広告挿入
クライアントサイド広告挿入とは、Client-Side Ad Insertionのことで、頭文字を取ってCSAIとも呼ばれます。
クライアントサイド広告挿入は、現在動画広告の主流となりつつあるアドテク技術に対応した配信方法であり、米国などで使われている動画広告フォーマットVPAID (Video Player-Ad Interface Definitionの頭文字の略称)も使用できます。
VPAIDは、サーバサイド広告挿入では対応していないため、クライアントサイド広告挿入を利用することで、変化が激しい最新の動画広告配信における技術にも対応可能となります。
デメリットとしては、動画広告のブロックをしている場合に表示されないケースが見受けられれこと、サーバサイド広告挿入と比べると表示に時間がかかってしまう場合もあります。
動画広告における純広告とアドネットワークの違い
動画広告には純広告とアドネットワークと呼ばれる種類があります。
純広告
動画広告における純広告とは、動画本編を配信するメディアと広告主との間で「出稿量」、「出稿期間」、「出稿対象者」などを元に、相対で金額などを決める方法のことです。
間に広告代理店が入る場合もあります。
純広告を動画広告として配信するためには、アドサーバと呼ばれる動画広告配信用のサーバを別途用意して、動画広告と動画本編をくっ付ける作業が必要となります。
純広告のメリットとしては、メディア側が広告主を選定できること、金額も交渉しやすいことが挙げられます。
デメリットとしては、メディアに知名度や集客力がないと広告主を見つけるのが難しいこと、動画広告の在庫を自分たちで確保しないといけないことが挙げられるでしょう。
アドネットワーク
動画広告におけるアドネットワークを利用した配信とは、動画本編と外部のアドネットワークと呼ばれるサービスを接続させて動画広告を配信する方法となります。
アドネットワークのメリットとしては、動画広告の在庫が既に確保されていることが多いため、メディア側が広告主を探す手間がかかりません。
また、リアルタイムビッディング(Real-Time Bidding/RTB)と呼ばれる、最適な広告を最適な価格で取引できる技術や、さらにメディアと広告主を絞り込むことができるプライベートマーケットプレイス(Private Market Place/PMP)といった新しい取引技術にも対応が可能となります。
デメリットとしては、ある程度動画広告の単価が事前に決まってしまうこと、必ずしも自分たちが意図しない動画広告が挿入されることが考えられます。
動画広告のマネタイズは使い分けが重要に
動画広告市場の規模拡大が見込まれていることから、今後も注目度が高くなっていくのは間違いありません。動画広告には様々な種類があり、その内容やターゲットによって種類を使い分ける事で、最適な効果を目指していきましょう。
また、YouTubeでマネタイズする場合と自社サイトでマネタイズする場合、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて適切な方法を検討していく必要があります。
どちらが必ず良いというわけではありませんし、中には両方を行なって使い分けている企業もありますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
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