会社設立したばかりの企業はもちろん、企業の事業規模が大きくなると経営者は「メガバンクをメインバンクにしたい」と思い始めるのでは無いでしょうか。
メガバンクの近くによくあるのが信託銀行です。
普通の銀行と比べると信託銀行の知名度は高くありませんが、実はとても便利な金融機関です。
今回はメガバンク(普通銀行)と信託銀行における法人口座の取引のメリットと違いについてご紹介いたします。
目次
法人口座とメインバンクとは
法人口座とは、企業などの法人が、法人名義で開設する銀行口座のことです。
中小企業やベンチャー企業の場合、経営者の個人名義で開設した銀行口座で取引することもありますが、それは法人口座とは呼びません。
メインバンクとは、2つ以上の銀行口座を持っているときに利用額や残高が多く、メインで取引をしている銀行のことです。
企業が密接な関係を持つ銀行のことをメインバンクと呼ぶこともあります。
多くの企業は銀行とのやり取り無しで経営を進めることはできません。
したがって企業の経営者がメインバンクを決めることは、二人三脚の相手を決めるようなもので、慎重に検討する必要があります。
もちろん経営規模の拡大や銀行との相性の問題などでメインバンクを途中で変更することも多くありますので、必ず同じ銀行をメインバンクにしなくても良いですが、スイッチングコストや信用を築くまでにはお互いに一定の時間がかかることも考えておきましょう。
信託銀行について
信託銀行を見たことや聞いたことがある方も多いと思いますが、実際に口座を持っている方や正しく信託銀行のことを理解している方は意外と少ないのでは無いでしょうか。
まずは信託銀行と普通の銀行の主な違いについて見ていきましょう。
信託銀行と普通銀行の違い
引用:一般社団法人 信託協会
信託銀行の大きな特徴として、普通銀行の銀行業務に加えて信託業務も営むことができることが挙げられます。
また、併営業務というものも行っているのが違いとなります。
信託銀行の業務内容
具体的に信託銀行の業務内容について見ていきましょう。
銀行業務
個人や法人からお金を預かる「預金業務」や企業などに融資する「貸付業務」、振込による送金など口座間のお金の移動を行う「為替業務」などがあります。
この辺りは普通銀行と同じと言えます。
信託業務
信託業務とは、信託銀行等の信託兼営金融機関や信託会社が、個人や企業などの法人が持つ財産を信託の設定により受託者に移転させて、その財産を管理・運用することを指します。
お金だけでなく株式などの有価証券、不動産、金銭債権など、財産的価値のあるものであればなんでも信託することができます。
例えば投資信託の信託管理などは信託銀行が行うことが一般的です。
併営業務
遺言の保管や遺言執行業務などの相続関連業務、企業の株主の名簿を管理する業務などの証券代行業務、不動産の売買の仲介業務などがあります。
この併営業務は信託銀行等の信託兼営金融機関にのみ認められている業務です。
メガバンク、信託銀行に法人口座を開くメリット
次に企業がメガバンクまたは都市銀に法人口座を開き、メインバンクにする意義について見ていきましょう。
多額の資金調達ができる
工場を建てたり、大規模なシステムを構築したり、チェーン店を全国展開したり、海外に支店を開設したりする場合、多額の資金が必要になります。
メガバンク・都市銀はさまざまな資金調達ツールを持っているので、頼りになります。
例えば私募債は、投資家に社債を発行することでお金を得る方法です。
私募債には、銀行の保証がつく銀行保証付私募債や、信用保証協会の制度を利用する信用保証協会保証付私募債、不動産を担保にする担保付社債などがあります。
さらに、社債を海外で発行して、海外資金を調達する方法もあります。
また、メガバンクは、企業が持つ金銭債権を買い取るサービスも行っています。これにより債権を流動化させることができ、資金繰りが改善します。
もちろん地銀や信用金庫などからも資金調達は可能ですが、金額の規模や柔軟さという意味ではメガバンクや信託銀行の方が規模的に大きな調達が可能です。
業務効率化を支援してもらえる
メガバンクや信託銀行は、法人顧客の業務の効率化支援も得意です。
売掛金の回収業務や買掛金の支払業務を、ITを使って省人化することができます。
その他、経費精算、給与支払い、資金管理といったルーティンワークもIT化、システム化することで効率化できます。
メガバンクや信託銀行に相談すれば、業務効率化計画作りを手伝ってもらったり、実際にシステムをつくるIT企業を紹介してもらったりすることができます。
海外支援を後押し
企業のグローバル化の支援も重要業務になっています。
海外の特殊事情に合わせた戦略、戦術のアドバイスがもらえたり、輸出入業務も手伝ってもらえたりします。
また、外国送金や外為業務もサポートしてもらえます。
信託銀行に法人口座を開くメリット
続いて、企業が信託銀行に法人口座を開き、メインバンクにする意義を考えていきます。
信託サービスが受けられる
信託とは、企業が持つ財産や資産を受託者に移転して、その財産や資産を管理・運用するサービスです。
財産や資産には、現金、有価証券、不動産、金銭債権などが含まれます。
リスクはありますが、うまくいけば財産・資産を増やすことができますので、本業以外の儲けが生まれれば企業経営のさらなる成長にも繋がるでしょう。
併営サービスが受けられる
企業の株主名簿の管理や証券代行業務、不動産の売買仲介などのことを併営業務といい、信託銀行が提供するサービスの1つです。
ファイナンス・サービスを受けられる
信託銀行はファイナンス業務に力を入れています。
ファイナンス・サービスの1つである不動産ノンリコースローンは、企業が持つ不動産を証券化して利益を生み出すことを目指します。
プロジェクトファイナンスは、発電所や鉄道、道路、港湾、石油化学プラントなどの構築に必要な資金を調達する仕組みです。
またM&A(企業の合併と買収)に必要な資金を調達するM&Aファイナンスもあります。
不動産仲介
企業がビジネスを拡大するには不動産を確保しなければなりません。
そこで信託銀行では、不動産仲介事業も行なっています。
信託銀行は顧客企業(法人口座を開設している企業)のために、生産拠点や販売拠点になる土地や建物の購入をサポートしたり、賃貸オフィスを探したりします。
社員のリモート化が進めば、大きなオフィスから小さなオフィスに移転することができ、固定費を圧縮できます。このとき信託銀行の不動産仲介サービスが頼りになります。
企業年金のコンサルティング
公的年金制度が常に財政難に苦しんでいるため、企業が運営する企業年金は従業員を安心させることができます。
つまり、企業が企業年金を充実させれば、有能な人材への強力なアピールポイントになります。
信託銀行では、確定給付型年金や確定拠出年金といった制度を、顧客企業向けに設計して提案しています。
企業年金を最適化するには、膨大かつ綿密な計算やシミュレーションが必要ですが、信託銀行ならそのような業務を難なくこなしてくれます。
信託銀行で法人口座を作るのに向かない企業とは
上記でメガバンクと信託銀行で法人口座を作るメリットについてご紹介いたしましたが、信託銀行で法人口座を作るのに向かない企業はあるのでしょうか。
中小企業やベンチャー企業は無理に信託銀行に口座を開設する必要はありません。
メインバンクにする金融機関は企業の「身の丈」にあったところが良いからです。
また、メガバンクよりも信託銀行の方が法人口座の開設が厳しいため、そもそも法人口座の開設が出来ない場合も多いのが実情になります。
小口の融資や取引は得意では無い
中小企業が無理に信託銀行と取り引きしても大きなメリットは得られないでしょう。
大きな資金需要がなく、全国展開する予定がなく、グローバル化を目指しているわけではなく、運用する資産が多額でないのであれば、地方銀行や信用金庫や信用組合と取り引きした方がメリットが大きいかもしれません。
メガバンク、都市銀、信託銀行にも、中小企業向けのサポートが存在しますが、それは彼らのメインの業務ではありません。
どちらかというと大企業や中堅企業をメインとした取引も多いため、優先順位が低くなってしまう可能性があります。
入出金を早く安く済ませたい場合
入出金のやり取りだけであればメガバンクや信託銀行よりもネット銀行を利用した方が手数料も安いですし、インターネットバンキングのユーザビリティも高いためおすすめです。
担当者からの営業もないため楽と言えるかもしれません。
法人の銀行口座開設完全ガイド
銀行の法人口座開設は年々審査が厳しくなっているのが実情です。
そのため、法人口座を開設するためには銀行口座開設の目的と事前準備をしっかりと確認しておき、戦略的に行うことがおすすめです。
実際に私が法人口座を開設した経験を踏まえて参考になりそうな記事をまとめてみましたので、ご関心ありましたら参照いただければと思います。
メガバンク、信託銀行と付き合ってメリットが出る企業は法人口座の開設を検討しよう
メガバンク、信託銀行との取り引きでメリットが得られるのは、次のような企業です。
- 大型投資をするために多額の融資が必要
- 全国展開や海外進出を考えている
- 大規模な遊休資産があり運用したい
メガバンクや信託銀行が提供しているサービスの中には地銀や信金、信組では提供できないものが多くあります。
つまり、それらのサービスを必要とする企業は、メガバンク、都市銀、信託銀行と付き合っていかなければなりません。
企業経営者は、事業拡大、全国展開、海外進出、大規模投資を考え始めたら、メガバンクや信託銀行の法人口座開設やメインバンクにすることを考えてみましょう。
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